私は、徹底的な「準備」に裏付けされた芸能が大好きな一方で、準備万端だからこそ逆に際立ったり溢れ出てしまう「性」もまた、エンタテイメントの醍醐味だと思っています。今回の中居さんの会見で、どうしても気になった点がひとつありました。会場の記者たちを中居さん自ら誘導する際、「フラッシュの点滅にご注意ください」と直筆で書かれたプラカードを「ネタ」として持っていたのですが、その直筆がまさかの超丸文字ではないですか! ここはアイドルショップ全盛の竹下通りか、ペンションブーム真っ只中の清里駅前かというぐらい80年代全開。特に「ご注意」の「ご」の味わいは、かつての丸文字世代としては涙ちょちょ切れモノ。
もしかして「中居くんの丸文字」はファンの間では常識なのでしょうか。SMAP解散に際して各メンバーが直筆メッセージを発表しましたが、中居さんの字はこんなんじゃなかったはず……と思い、「中居 直筆」で検索してみました。記憶通り「解散メッセージ」の文字は、かなりクセは強いものの、まったくもって丸みは帯びていません。しかし、それ以外の直筆とされるものは、押し並べて時代性豊かな丸文字ばかりで、SMAPもれっきとした80年代アイドルだという事実を再認識させられます。
思うにこの丸文字は、「アイドル中居正広」として彼自身が設定した要素のひとつなのでは。恐らく彼はTPOに応じて使用する文字を変えていると私は推察します。だとすれば、SMAP解散時には丸文字を封印し、今回の会見でわざわざ「解禁」した──。その裏には「アイドル中居正広復活もしくは継続」の意が込められていると読み取ることができなくもありません。うっかり出た「性」なんかじゃなかった。
※週刊朝日 2020年3月13日号