ジャーナリストの田原総一朗氏は、イラン革命防衛隊の司令官殺害について、トランプ大統領の意図を解説する。
* * *
2020年、世界中が注目している最も重要な政治イベントが、11月に行われる米国の大統領選挙である。
この大統領選挙で、トランプ大統領が再選されるか否かで、世界のあり方が大きく変わることになる。
前回の大統領選挙では、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、そして大手テレビはいずれも、本命はヒラリー・クリントンで、これで決まり、という報じ方をしていた。日本のマスメディアも、同様の報じ方をしていた。
ところが、当初は共和党の中でも泡沫(ほうまつ)候補扱いをされていたドナルド・トランプが当選した。
トランプは選挙で、それまでのどの大統領も絶対に口にしなかった、とんでもない事柄を言ってのけたのである。
米国は少なくとも第2次世界大戦以後は、事実上世界の仕切り役を演じていて、世界の仕切りを上手にやれるかどうかが、大統領の手腕だった。だが、トランプは、世界のことはどうでもいい、米国にとってトクになることしかやらない、そして偉大な米国を復活させる、と宣言した。
これは、米国の少なくともインテリにとっては、米国人としてのプライドを捨てる恥ずかしいことだった。
だが、トランプの言い方が米国の国民大衆には受けたのである。とくに豊かではない庶民の多くは、米国が世界の仕切り役を演じるために世界の犠牲になり、だから自分たちは生活が苦しいのだ、と捉えていた。
米国は人件費が高く、グローバリズムのために、米国の多くの企業が工場を人件費の安いメキシコやアジアの国々に移しだした。旧工業地域は廃虚のようになり、当然ながら失業者も多くなった。貧富の格差は大きくなり、米国民の多くが「貧」に属することになった。だから、彼らはトランプの言い方に乗ったわけだ。
そしてトランプは、オバマ前政権の政策を「だから米国は損失を被ったのだ」と、ことごとく否定した。