TPPやパリ協定、イラン核合意からの離脱、そして北大西洋条約機構(NATO)の国々も手厳しく批判した。まるでNATOが壊れても構わないように、である。
米国にとってトクになることしかやらない、と宣言していたそのトランプが、1月3日にイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を爆殺することを命じたようだ。このことは、米軍幹部たちも予想していなくて、「仰天」したとニューヨーク・タイムズは報じている。
ソレイマニは、イラン国民から英雄視されていて、イランが米国にとって危険極まりない報復攻撃をするのではないか、と国防総省幹部たちが恐れていたためだ。
実はソレイマニ殺害は、オバマ前政権の時代から選択肢として何度か出ていたのだが、そのたびに否定されていたのである。トランプ政権になってからも持ち出されたことはあるが、トランプ自身も否定的だったということだ。
なぜ、トランプはあえて「究極」の選択をしたのか。トランプの意識は11月の大統領選挙がすべてで、共和党右派に「米国はイランに対して弱腰だ」という不満があり、弾劾(だんがい)問題を抱えているトランプは、イランに強気で対峙(たいじ)することが決め手になると考えたようだ。
世界各国は、危険極まりない愚策で、大統領の資格なし、とまで批判している。安倍首相や閣僚たちはどのように捉えているのだろうか。
※週刊朝日 2020年1月24日号