――調査中に身の危険を感じたことは?

M:ワインスタインはこの事件が明らかになることを阻止するために脅してきた。有力弁護士を雇い、告訴すると何度も迫られた。私立探偵も使って私たちを尾行したり、調査をさまざまな手口で妨害しようとしたりした。記事掲載の直前には、ワインスタイン本人がニューヨーク・タイムズに乗り込んできたほどだ。でも身体的に身の危険を感じることはなかった。逆に、彼が露骨な手口を行使すればするほど、私たちは記者として調査し、取材して、記事を掲載するという使命感に燃えた。彼やその関係者の行為を明らかにするために。世界中には、戦地のリポートなどで実際に命をかけて仕事している記者たちがいる。私たちがこの報道でくじけるわけにはいかなかった。

ニューヨーク・タイムズ記者のジョディ・カンター(左)とミーガン・トゥーイー(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
ニューヨーク・タイムズ記者のジョディ・カンター(左)とミーガン・トゥーイー(C)Universal Studios. All Rights Reserved.

――#MeToo運動に及ぼした影響を、どのように考えますか?

M:報道のあと、多くの女性が性的暴行や嫌がらせについて語り始めた。ハリウッドだけではなく人種や職種や年齢やすべてを越えて。

私たちが調査を始めた当初は、この真実を暴露して記事を掲載しても、誰も関心を示さないし、世界は変わらない、性的暴行やハラスメントは社会の一部なのだから、為すすべはないのだと言われたものだ。だが、その意見は全くの間違いだった。私たちが記事を掲載した瞬間から、人々は強い関心を示してくれた。この5年間は、問題がいかに社会の悪貨としてまかり通ってきたかを証明する時間だった。社会のさまざまな場所で、多くの人が被害に遭ってきた。

一方で、5年が経過し、世界中の女性が#MeTooに加わった時の、「世界が変わるんだ」という感激は薄れつつある。社会のあちこちで職場での問題解決を試みる動きが生まれたかと問えば、答えはノーだろう。まだまだ改善し、向上する余地は残っている。

私たち記者であり、アクティビストでも提唱者でもない。私たちの仕事は問題を解決することではなく、問題に光を当て、真実を公表すること。私たちはこれからも、その仕事を続けていく。

※「SHE SAID/シー・セッドその名を暴け」1月13日から全国公開