特定技能の対象14業種のうち、技能実習制度での受け入れがない外食業界では、法改正以降、危機感が強まっている。コンビニやファストフード店などで外国人を見ることが増えたが、彼らは技能実習生ではなく、留学生として日本に滞在し「資格外活動」として週28時間という制限のなかでアルバイトしている人が多い。そして人手不足の日本にとって貴重な戦力だった彼らが、特定技能の新設と同時にいなくなってしまっている。日本語学校の業界団体「全国日本語学校連合会」の荒木幹光理事長は言う。
「入管法の議論が始まった昨年秋から、留学ビザの交付が厳しくなっています。東京を中心にアルバイト目的で留学する学生が問題になっており、そうした学生は特定技能で来てくださいということでしょう」
大量の留学生が失踪した東京福祉大学の問題は記憶に新しい。こうした問題を受け、アルバイト目的の「出稼ぎ留学生」へのビザは出なくなったのだ。
同連合会の調べによれば、日本語学校への4月入学生のビザ交付率を2018年と19年で比較すると、ミャンマー人は83.7%から4.3%、ネパール人は47.8%から2.3%、バングラデシュ人は68.8%から0.8%(すべて東京入管分)などと、一部の国の留学生への交付率が激減している。
留学生の穴を埋めるべく、外食業では国内、国外ともに技能試験が実施され、これまでに1546人が合格している。しかし、特定技能の取得者は37人に過ぎない。外食業の業界団体「日本フードサービス協会」の石井滋常務理事は言う。
「在留資格申請の審査が遅れ、現時点での取得者が少ない状況になっています。その大きな理由として、外国人留学生の国民年金の未納があります。日本の社会保障制度は、国籍に関係なく、日本人と同等に適用されるため、外国人留学生にも国民年金の支払い義務がある。留学生が特定技能を取得するには、未納金の問題を解決する必要がある」
内定を出した企業が入社祝い金を出し、未納分を払わせるなどの対応がとられているという。
試験を受けて特定技能を目指す外国人がいる一方、当初から受け入れがスムーズに運ぶと見られていたのが、元技能実習生や技能実習から特定技能に移行するパターンだ。条件をクリアすれば、試験は免除される。
だが、こちらも問題が山積している。その一つが、履歴書の偽造だ。日本を目指す技能実習生は、日本で従事する業務と同種の業務を海外で行った経験が求められる。そのため、申請時に海外の所属機関からの証明書を求められるが、「1件100ドル程度で偽造書類の作成を請け負う会社があるほど、職歴の偽造は常態化している」(前出のベトナム機関幹部)。