引退会見で笑顔を見せる巨人の阿部慎之助 (C)朝日新聞社
引退会見で笑顔を見せる巨人の阿部慎之助 (C)朝日新聞社

 巨人の阿部慎之助(40)の現役引退に驚いた人は多いだろう。今季は94試合に出場し、打率2割9分7厘、7本塁打、27打点(9月27日現在)。引退の一報が報じられる前日の23日のヤクルト戦(神宮)でも右翼席に豪快な本塁打を放ち、来年も現役でできると誰もが思っていた。引退決断の背景には、原辰徳監督の「後継者問題」が見え隠れする。

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 今季4年ぶり3度目の監督に復帰し、リーグ優勝に導いた原監督だが、ヘッドコーチを置いていない。スポーツ紙デスクはこう分析する。

「ヘッドコーチになる人は次の監督、と報道陣は受け止めていました。現役でプレーする阿部が最有力候補であることは間違いありませんでした。原監督も長嶋茂雄終身名誉監督の下、1999年に1軍野手総合コーチで入閣し、2000、01年とヘッドコーチを務めて01年秋に監督に就任しています。原監督からすれば、阿部に1年でも早くコーチをさせて帝王学を伝授したい思いが強かったのでしょう」

 阿部は25日に東京都内で行った会見で、

「(引退の決断は22日の)神宮の初戦の(試合前)練習ですかね。監督と話す機会がありまして、思っていることがお互い一致したということで。僕の将来のことだったり、いろんなことを僕が思っている以上に原監督が考えてくださっていた。そこで納得できました」

 とすっきりした表情を浮かべた。引退後の去就については明言を避けたが、

「原さんがいなかったら僕はここまでなっていなかったと思います。ルーキーで何も知らない僕を開幕スタメンで使ってもらったり。だからこそ、辞めることが恩返しとは思わないですが、今後、何らかの形でジャイアンツに恩返しできればなと考えていたので」

 と力強く語った。

 原監督から指導者としてのイロハを学び、数年後に阿部政権誕生へ――。

ここで気になるのが前監督の高橋由伸氏の動向だ。原監督が15年限りで辞任した際、指導者としての準備もできないまま引退試合も行わず、監督に就任。3年連続で優勝を逃してユニホームを脱いだが、岡本和真や吉川尚輝ら若手を育てた手腕を評価する声は多い。

 だが、年下の阿部が原監督の後継者になるプランが明確になったことで、監督復帰は困難な状況になった。巨人がダメなら他球団で監督をやってほしい――。そう思っている人も多いのではないだろうか。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事