ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
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小泉進次郎 (c)朝日新聞社
小泉進次郎 (c)朝日新聞社

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、小泉進次郎氏の話術について考察した。

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 家にいる時は基本テレビを消音の状態で付けっ放しにしている私。テレビに出る仕事をしておいて何ですが、今のテレビって無音でも充分に内容を把握することができてしまうのです。収録モノやVTR素材には常時テロップが上下左右に付いている。生放送のニュースや情報番組でも、詳細が書かれた巨大なボードや液晶モニターを映している場合がほとんど。今やスポーツ中継ですら、画面上の文字情報だけで事足りるほどで、そうやって静かな画面を眺めていると、いかに「生身」の声や音の担う役割が少ないか、唖然とします。逆に音を消して『Mステ』を1時間鑑賞するなんてのも、なかなか乙なものです。カメラワークを追いながら曲の雰囲気を想像したり、歌い手の表情や動きからメロディーを読み取ってみたり。昔から「目は口ほどに物を言う」と言いますが、顔や所作というのは、言葉以上に情報を伝えてくれます。

 先日も何も知らずに画面に映し出される小泉進次郎さんの表情を2秒観ただけで「入閣かしら?」と思ったらその通りでした。現在の日本でおそらく最も弁舌が冴えている進次郎氏ですが、「進次郎ウォッチ」は消音に限る。過剰に抑制されたトーンや、妙な間合いを多用した口調抜きで聴く方が、よりダイレクトに彼の言葉は届く気がします。

 進次郎氏の最大の特徴は、やたらと自分の言葉に頷きながら話すところです。特に自信満々の時やテンションが上がっている時は、その傾向が顕著に表れます。時にゆっくり目を閉じ、時に遠くを見つめ、時に首を横にも振りつつ、まるでクラシックでも鑑賞しているかのような恍惚の表情を浮かべ、とにかく頷く。文節ごとに頷く。さらに父親譲りの悠然とした身振り手振りが加わることで、相手側(彼の場合それは世間や国民)も似たようなモードに導かれる。彼を見ていると、言葉や話の内容に引き込まれるというよりは、どこか催眠術に近いものを感じるのは私だけでしょうか。

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