建物の全壊・焼失は61万棟、死者は2万3千人に上り、経済被害は95兆3千億円と試算されている。これが南海トラフにいたっては、死者23万1千人、建物の全壊・焼失は209万4千棟、経済被害は171兆6千億円と想像を絶する被害になる。こうした大地震が、30年以内に70~80%の確率で起きるというのだ。
本誌編集部は、国立研究開発法人「防災科学技術研究所」(茨城県つくば市)が公開している最新データから、今後30年以内に震度6以上の地震が起きる確率を調べ、まとめた。
3大都市(東京、名古屋、大阪)で今後30年以内に震度6以上の地震が起きる確率が60%以上の地区についてまとめたものだ。東京では11区があてはまり、トップの江戸川から中央までの7区は、いずれも震度6弱以上の確率が80%を超えている。
地域的に見ると、海に近く、川の河口付近の区が目立つ。
『資産価値を守る!大災害に強い町、弱い町』(朝日新書)の著者で、不動産などのコンサルティング会社の代表取締役を務める山崎隆さんは、こうした湾岸エリアの地盤についてこう指摘する。
「工場などが立っていたこれらの土地は、ほとんどの場合、低湿地や埋め立て地。泥の表層をコンクリートなどで固めているイメージ。もともと人が住むことを想定した場所ではなかった。直下型の地震など、自然災害には最も弱い地盤です。高層マンションが倒壊するかはわからないが、少なくともゆがんだり、傾いたりはするので、命を失うことはないとしても、住み続けるのは難しくなるのでは」
東京と同様に、名古屋市、大阪市でも地盤が弱い地域で、大地震のリスクが非常に高くなっている。
名古屋市では全16区のうち、震度6弱以上となる確率が60%以上の区が8あった。この中には、名古屋駅など中心地がある中村区も含まれている。市の試算では、震度7の地震で死者数は最大6700人。中村区のほか、中川、港、南の計4区に被害が集中し、全死者数の8割以上を占めるとしている。
大阪市では、鶴見区、都島区などの北東部で震度6弱以上が60%以上の確率になっている。試算では南海トラフでの死者数は12万人に及ぶとされる。
3大都市以外の全国の自治体で地震のリスクが高い地域を見ていこう。
東日本の30位以内を見ると、千葉、神奈川両県の自治体が圧倒的に多い。
目立つのは千葉県だ。県東部、太平洋側にある山武市や多古町などでは震度6強以上の確率が50%近くになっており、6弱では90%を超える。東京湾に面する習志野、市川両市などでも6強が40%近い確率になっている。