先日、クイズ番組で田中圭さんとご一緒したのですが、相変わらずの不詳感に加え、時代をひた走る「選ばれし男」特有の眩さが漲っていました。番組の中で田中さんとツーショットになる場面があり、そこで私は「これがリアルおっさんずラブよ!」とベタなことを言ったところ、後日ファンと思われる方から目の覚めるような声を頂きました。「リアルおっさんずラブとか言わないで。悪いけど営業妨害!」。改めてオカマの本懐を思い起こさせるべき言葉です。営業妨害。ひと昔前なら、女性ものの服屋で試着をしていたり、派手な化粧でテーマパークに行ったりした際に、よく浴びせられた言葉でもあります。元来「偽物」であるはずの私のような人種が、今や他人様(しかも女性)のファンタジーをぶち壊す「リアル」になり得ているなんて、つくづく素敵な時代になったものです。
とは言えファンタジーとは、あらゆるリアルを振り切り、幻滅に打ち克ち乗り越え突き進む「闘い」です。他人のせいにしているようでは、まだまだ甘っちょろい。ゲイやオカマがノンケ男性に抱く妄想なんてどれだけエグくて身勝手なことか。妄想に仲間や共感は要らない。
※週刊朝日 2019年9月6日号
【週刊朝日編集部からのお知らせ】
いつも『アイドルを性(さが)せ!』をご愛読くださり、ありがとうございます。この連載は2016年5月から週刊朝日で始まりましたが、このたび書籍化して、単行本『熱視線』(本体価格1400円)として発売されました。連載の内容を大幅に加筆修正し、ミッツさんご自身が描いているアイドルの似顔絵(AERA dotでは未掲載)も収載しています。装丁にもこだわりました。毒と愛を込めて作った一冊です。ぜひ、紙の本でじっくり味わってお楽しみください!