
韓国政府が8月22日に発表した日韓の「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の破棄は、韓国でも物議を醸した。
中道派の韓国紙記者はこう言って肩を落とした。
「当初GSOMIA破棄の話が浮上したときは安保を対日カードに使うのか、それほど対抗カードがないのかと嘆息しました。GSOMIA破棄は韓国も国益を損なう。22日午前まで条件付きで延長というムードでしたから仰天しています」
韓国の青瓦台(大統領府)は破棄の理由を翌23日にも説明した。日本が8月2日に安保上の理由から韓国をホワイト国(輸出優遇国)から除外することを決め、両国の安保協力に重大な変化をもたらしたこと、日本に7月、8月と特使などを送っても、外相会談でも進展がみられなかったこと、8月15日に文在寅大統領が日本に重要なメッセージを送ったにもかかわらず日本からなんの反応もなかったことなどを挙げた。
しかし、「破棄の背景には曹国・前青瓦台民情首席秘書官の法務部長官(法務大臣)任命を世論に反して強行するため、国民の目をくらます狙いがあったのではないかという見方も出ています」(前出記者)。
韓国では長官任命の前に聴聞委員会が開かれるが、その前の“身体検査”で噴き出したのが、曹前秘書官の子女の大学入学をめぐるスキャンダル。曹氏が大学教授時代に力を行使したといった、数々の疑惑が浮上。朴槿恵前大統領の知人、崔順実氏が娘を名門大学に不正入学させた手法と同じだ、と非難囂々(ごうごう)の状態となった。
この騒動で、日本の輸出管理強化やホワイト国除外で、下落に歯止めがかかっていた文大統領の支持率は2.7ポイント下落し(46.7%)、不支持(49.2%)が上回り、レームダックとまで書かれた(22日、世論調査会社「リアルメーター」)。
破棄理由のひとつとされた、8月15日、韓国の光復節の文大統領の発言は、「日本が対話を望めば喜んで手をとる」というものだった。それからわずか1週間で反応を求めるのはあまりにも性急ではあるまいか。