香港にあるブルース・リーの像。地元での人気は今なお根強い (c)朝日新聞社
香港にあるブルース・リーの像。地元での人気は今なお根強い (c)朝日新聞社
香港国際空港でプラカードを掲げて抗議活動をする人たち=8月13日
香港国際空港でプラカードを掲げて抗議活動をする人たち=8月13日
日本語のプラカードでデモへの理解を訴える人もいた=8月13日
日本語のプラカードでデモへの理解を訴える人もいた=8月13日
香港国際空港のロビーで座り込むデモ隊=8月13日
香港国際空港のロビーで座り込むデモ隊=8月13日
1989年の天安門事件と今の香港のデモ鎮圧を結びつけ、歴史を繰り返すなと訴えるチラシ。中国政府の武力介入への警戒感は強い
1989年の天安門事件と今の香港のデモ鎮圧を結びつけ、歴史を繰り返すなと訴えるチラシ。中国政府の武力介入への警戒感は強い
G20大阪サミットの会合でトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の間に座る安倍晋三首相。香港問題では米中のはざまで日本政府は身動きがとれない (c)朝日新聞社
<br />
G20大阪サミットの会合でトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の間に座る安倍晋三首相。香港問題では米中のはざまで日本政府は身動きがとれない (c)朝日新聞社

「Be water」

 いま、この言葉が中国のトップ、習近平(シーチンピン)国家主席を追い詰めようとしている。もとは香港の伝説のアクションスター、ブルース・リー(李小龍)が語ったものだ。

 ブルース・リーは鍛えた肉体でカンフー映画を大ヒットさせたが、1973年に32歳の若さで亡くなった。地元香港はもちろん日本でも人気のスターの言葉が、絶大な権力を誇る中国トップにどうつながるのか。

 実は、いま香港で行われている若者を中心としたデモでは、この言葉が“活動方針”となっているのだ。

 ブルース・リーは多くの名言を残した。次の「燃えよドラゴン」のセリフを覚えている人もいるだろう。

「Don’t think. Feel(考えるな、感じろ)」

 同じようにインタビューで答えた次の言葉も有名だ。

「心を空にしろ。水のように形をなくすんだ。水は注げば、カップ、ボトル、ティーポットのそれぞれの形にちゃんと収まる。水はなめらかに流れつつ、時には激しくぶつかることもできる。水になれ、我が友よ」

 困難に直面したときは形式にとらわれず臨機応変に対応しよう、といった意味などが込められている。これが実践されたのが、「香港国際空港」でのデモだった。

 アジア有数のハブ空港に多くの若者が集まり、香港政府に抗議した。デモを受けて当局は8月12、13日に多くの航空便を欠航させ、空港機能はマヒ。お盆休みを海外で過ごす日本人にも影響がでた。

 なぜ空港でデモをしたのか。デモに遭遇し、取材した大手メディア記者はこう語る。

「若い大学生らが中心となって空港のロビーに座り込み、『香港に自由を』などと中国語や英語で叫んでいました。英語や日本語のプラカードも掲げ、海外から到着する人にもアピール。空港は国際世論にデモを見せつけられる絶好の場所なのです。多くの外国人が行き交う空港では、警察は催涙弾などを使用しにくい。それまでの市街地でのデモでは催涙弾などで排除されていたこともあり、空港に目をつけたのでしょう」

 デモ隊は複数のグループがSNSを通じて空港に集まるよう呼びかけた。特定のリーダーがいなくてもネットを通じて多数を動員できるため、警察側は阻止するのが難しかった。2カ月近く続いた市街地でのデモにこだわらず、空港に目をつけた「臨機応変」さもあって、効果は大きかった。

次のページ
傷ついた中国政府と習近平国家主席の威信