ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ジャニー喜多川さん」を取り上げる。
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トシちゃんやマッチの時代から数えてみても、実に40年近くにわたり、私はジャニーズの音楽と男たちに魅了されてきました。ジャニーズがすごいのは、「ジャニー喜多川」たったひとりの人間の感覚と流儀のもとにずっと成り立ち続けているところです。ほぼすべてのジャニーズタレントは、まず「ジャニーさんの目に留まるか否か」から始まると言われています。要するにジャニーズ事務所は、ジャニー氏の瞬発的な主観の産物なのです。本来、主観ほど頼りにならないものはありません。しかしジャニー氏のそれは、あらゆる客観性を含んだ上に、女性にも男性にも偏らない独自の嗅覚と自信に溢れていました。そして世間の多くが、そんな(ひとりよがりではない)主観(ヴィジョン)に影響を受け、共鳴し続けた結果、これほどまで磐石かつ多彩な芸能王国は築かれたのです。
才覚にマニュアルは存在しません。それでも長い間ファンをやっていると、そのこだわりが少しだけ解ったような気になってくるもの。私がもっとも影響され共鳴したのは、少年像に対する揺るぎない理想(ファンタジー)です。楽曲に込められた彼の美意識に、何度胸をえぐられたことか。光GENJIの『ガラスの十代』、KinKi Kidsの『硝子の少年』、NEWSの『紅く燃ゆる太陽』、タッキーの『キ・セ・キ』(名曲!)など、ジャニー氏が描き出す少年像には常に定番の脆さと臆病さがある。