日本は南北に長い島国です。交通や通信の発達で、都会と田舎の隔たりも少なくなってきてはいますが、それでもやはり、無知故の勝手な感情移入も含め、私たちは僻地に対して特別な想いを抱いて暮らしています。そして吉岡秀隆という俳優は、そんな日本人の『僻地ファンタジー』を40年近くも一手に担い続けてきました。ファンタジーというのは、非当事者の目線や感想もしくは願望で成り立つもの。例えば、吉幾三さんや松山千春さんやBEGINの方たちを『(地方や田舎の)体現者』とするならば、吉岡さんは都会から出向いた『体験者』です。そう考えると私たちはずっと吉岡さんのお芝居を通じ、北海道や沖縄のド田舎を疑似体験し、ファンタジーを膨らませてきたのだということが分かります。しかもそのファンタジーが極めてリアルなのは、吉岡さんの演技や役者としての生き様がリアルだからにほかなりません。

 余談ではありますが、私は子供の頃、よく吉岡秀隆さんに似ていると言われました。厳密には小学生時代の純くんに。吉岡さんご本人は私より5歳上ですが、特に『北の国から’83冬』から『北の国から’84夏』の辺りは、私(小学2年~3年)も平均より背が高かったこともあってか、街で知らないオバちゃんに「あ、『北の国から』の子だ!」と間違えられるほどでした。どちらかというと母親役のいしだあゆみさんになりたかった類の子供だった私は、今では松任谷由実さんや古市憲寿さん、大韓航空のナッツ姫に似ていると言われています。あと、女装した古田新太さんにも妙な親近感を覚える今日この頃です。

週刊朝日  2019年6月28日号

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