![イン上海/秋吉敏子ジャズ・オーケストラ](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/7/1/240mw/img_71b4ff0d006757e3c5a1d1ff8aee368342930.jpg)
トシコのプロ根性に感嘆
In Shanghai / Toshiko Akiyoshi Jazz Orchestra
日本が世界に誇るジャズ・ミュージシャンのパイオニア、秋吉敏子の新作である。長年のファンなら、それがオーケストラと知って、驚きと喜びが同時に訪れた感覚になることだろう。30年間運営し、頂点を極めたオーケストラを2003年末に解散。その時に印象的だったのが、「ピアノを練習する時間を作って、もっと上手くなりたい」とのトシコの言葉だった。功成り名を遂げ、70歳を超えてさらに前進する意欲を持ち続ける姿勢は、多くの後続にとってのお手本となったはずだ。
2004年以降はソロ、夫ルー・タバキンとのデュオ、トリオ等の小編成を中心にアルバムを制作。ピアノに専念できる環境の中、新たな成果を重ねた。その一方で2007年にはドイツSWRビッグ・バンドのプロジェクトに招かれ、ピアノスト&音楽監督を務める2枚組自作曲集をリリース。単発の特別興行だとわかりながら、今後の新展開にも期待を抱かせた。
本作は旧満州生まれのトシコが、再び中国でコンサートを行いたいという情熱を現実にした成果だ。95年に恩師を招いたオーケストラの中国公演の後、同国の目覚しい文化・経済発展に刺激を受けたトシコは、解散後という状況にありながら、強い思いを実現するためにバンドの再編に動く。ANAからのサポートも大きな後押しになった。
「上海東方芸術中心」で行われたコンサートは、時間的制約がある中で、トシコが今できる最上のオーケストラをプレゼンしたもの。50年代に渡米し、先人のない環境で道を切り開いてきた労苦を曲名に象徴させた初期代表曲#1で、ステージは幕を開ける。躍動的なピアノ・ソロで恩師をトリビュートする#2、ピアノとふくよかなホーン・セクションが重なり合う#3、中国公演であることを意識して伝統楽器を盛り込み、実娘マンディ・満ちるの中国語歌唱もフィーチャーした#4、トシコのバピッシュなピアニスト魂が全開になるリンカーン・センター委嘱曲#5。平和を願うトシコがオーケストラ解散時に初演した#6では、マンディが歌い、タバキンがテナー・ソロで引き継ぐ流れに、家族愛が感じられて素晴らしい。7年間のブランクがまったくない“現役感”を打ち出したトシコのプロ根性に感嘆する新作だ。
【収録曲一覧】
1. Long Yellow Road
2. I Know Who Loves You
3. My Teacher Mr.Yang
4. Chinese Ballad
5. Drum Conference
6. Hope (Epilogue of Hiroshima)
秋吉敏子:Toshiko Akiyoshi(p,cond) (allmusic.comへリンクします)
ルー・タバキン:Lew Tabackin(ts,fl)
2010年10月、上海録音
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