とは言え、『本名・横浜流星世代』が社会で活躍し始めるところまで時代は進んだということです。ついこの間も『王子様』と命名され18年間生きてきた青年が、改名を申し立て認められたニュースを目にしました。いつかそんな人たちが出現し、下手すれば溢れ返る日が来るのでは……。そんな予感を抱いたのが平成初期の頃でしたから、「いよいよ」なのかもしれません。80年代以降の日本を支えてきたのは間違いなく『メルヘン&ヤンキー』です。このフィルターさえ通せば、ここ40年の事象や流行はだいたい腑に落ちるはず。中学時代に『星彦』という名前の友人がいましたが、彼の母親ももれなく超メルヘンな人でした。「星彦はねッ、7月7日に生まれたからぁ、星彦っていうんだお!」とルンルン調に説明してもらった記憶があります。

 私は古い体質の人間で、男の子には『郎』『平』『也』が、女の子には『子』『美』『恵』が付くような名前が良いと思う派です。しかし、これまた大阪で会った20代前半のニューハーフの子が『楓』という名前で、「ずいぶんと日本っぽい源氏名(女性名?)ね」と言ったら、「これ、本名なんですぅ」とドヤ顔をされびっくりしたと同時に、『メルヘン&ヤンキー』にはこのような結果を生む可能性もあるのだと感心した次第です。そう言えばフィギュアスケートのザギトワ選手に贈られた秋田犬は、メスなのに『マサル』でしたね。これだとジェンダーレスなメルヘン社会では小回りが利かない。

週刊朝日  2019年3月29日号

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