森林を伐採し、剥き出しになった山肌に大量のソーラーパネルが設置される。そんな光景が全国津々浦々で見られるようになった。現在、大規模な太陽光発電所「メガソーラー」の建設を巡って、住民トラブルが相次いでいる。環境破壊や、土砂崩れなど防災上のリスクがあるとして、全国各地で地元住民たちの反対運動が起きているのだ。
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地方に残る自然がターゲットにされているかのようだが、静岡県伊東市や栃木県那須町にもメガソーラー計画が浮上するなど、風光明媚(めいび)な観光地も例外ではない。
三重県四日市市の郊外でも今年2月末、メガソーラーの建設工事が始まったばかりだ。現場周辺では木を伐採する音が響く。
地元住民らがメガソーラーの建設計画を知ったのは、2016年夏ごろのことである。同市山田町、波木(はぎ)町、小林町にまたがる約95ヘクタールの丘陵地を開発している。
当初の事業規模は、太陽光パネル23万7千枚を設置し、出力は5万キロワットに及ぶ。太陽光発電の開発を手掛ける東京都の会社などが出資する合同会社が開発事業を行う。
山田町在住の60代男性が表情を曇らせる。
「私は子どものころ、石油コンビナートが立ち並び、四日市ぜんそくの発生源になった塩浜地区に住んでいました。周囲で四日市ぜんそくの患者はどんどん増えていきました。私の父も認定患者となり、里山があって空気の澄んだ山田町に引っ越してきたのです。ところが、今度はメガソーラーによる環境破壊に直面しているのです。本当にやり切れなくなります」
メガソーラー計画に反対する市民団体「足見川メガソーラー計画から里山を守る会」は、三重県と四日市市に、事業中止を求める5千筆以上の署名を提出するなど、反対運動を展開している。代表の矢田延人さんが語る。
「四日市市の森林面積は、市の面積の13%しかありません。貴重な自然がさらに失われていくことになり、同時に景観問題や生態系の保全問題、農作物への悪影響、足見川下流域で水害が起きるのではないかと心配する声が上がります」
気温の変化による農作物への影響を懸念する声は、いまも聞かれる。計画地の近くで茶畑を営む農家の男性は、不安げに語る。