ジャーナリストの田原総一朗氏は、戦争を知る政治家がいないことを危惧する。
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12月18日に、政府は「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。
陸海空にとどまらず、宇宙やサイバー空間などを含む「多次元統合防衛力」を目指すとともに、これまで抑制してきた自衛隊の打撃力を拡大するというのである。
私が特に気になったのは、ヘリコプターを搭載する海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を改修し、短距離で離陸し、垂直着陸できる米国製の戦闘機F35Bを使えるようにしたことだ。このことは前回も記したが、今回あらためて記さなければならないと強く思ったのは、この「いずも」の空母化に、自民党議員や学者、そして野党の少なからぬ議員が賛成していることがわかったからである。政府は、憲法9条のもと、日本は専守防衛であり、他国から攻撃を受けた場合、自衛隊は“盾”となり、“矛”の役割を担って戦うのは米軍だとしてきた。
自民党の歴代首相は、いずれもそのことを強調し続けてきた。攻撃に運用できる空母は、憲法上保持できないとしてきたのである。
だが、「いずも」型護衛艦を改修して、米国製の戦闘機F35Bを搭載するということは、いつでも攻撃型として運用できる、ということだ。
これは、どう考えても専守防衛の範囲を逸脱しているのではないか。
だから、自民党議員の中にも「問題あり」だと捉えている議員が少なからずいると考えていたのである。
だが、私が問うた議員で「問題あり」と答えたのは一人もいなかった。防衛問題に関心のありそうな文化人たちにも問うたが「問題あり」とする答えは少なかった。自衛のために米軍と協力して戦うのはやむを得ないのではないか、というのである。
30年ばかり前になるが、竹下登が首相になったとき、私は、一対一の場で、竹下首相に「日本には自衛隊という組織があるが、自衛隊法などで、実際には戦えない軍隊です。これでいいのですか」と問うた。