“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、改正出入国管理法の問題点を指摘する。
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我が家の庭で、野良猫がのんびりとひなたぼっこする。その姿を見ると、「猫の手も借りたいほどの忙しさ」とはよく言ったものだと思う。あの野良猫たちが一生懸命に働きだすほどとなれば、よほどの人手不足だと実感するだろう。
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改正出入国管理法が成立した。猫の手も借りたいほどの人手不足の業界もあるだけに、むげに全否定するわけにはいかないだろう。
一方で、もろ手を挙げて賛成する法律でもない。
まず第一に、本当に人手不足ならば賃金はもっと上がっているはず。劇的に上がっていないのに人手不足と言われても、「なんだかな~」と思ってしまう。
政府のこれまでの政策とも矛盾する。経団連に賃上げ要請してきた一方で、外国人労働者を呼び込もうとする。労働供給を増やせば賃下げにつながるので、「やりたいのは賃上げか賃下げ、どっち?」と思う。
政府の賃上げ要請を最初聞いたとき、「日本は本当に資本主義国家なのか?」と私はのけぞった。まさに社会主義的、計画経済的。資本主義国の政府がなすべきは、労働需要を増やす環境づくりのはず。外国企業の日本誘致や海外進出した日本企業の呼びもどしだ。
それでこそ、日本人労働力の需要が増え、賃金が上がる。現在、人余り気味のホワイトカラーへの影響が特に大きい。モノやサービスと同様、賃金も需要と供給の関係で決まるはずだ。
日本政府は企業を呼び込む(=労働需要を増やす)努力をしないばかりか、逆に供給を増やそうとする。これでは日本人労働者が救われない。だからこそ、受け入れ外国人の上限数を明確にすべきだと思う。
その点、トランプ米大統領を見習うべきだ。厳しい移民政策で労働供給を制限し、企業の米国回帰や外国企業の米国誘致で、職の安定と賃上げを図っている。
日本経済新聞の10月3日付夕刊1面に「農業ロボ育め 米で投資拡大」という記事が掲載された。