ジャーナリストの田原総一朗氏がいまの米中、日ロの関係について解説する。
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11月30日から12月1日にかけて、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催された。
“新・冷戦”と呼ばれている米中関係激化の中で、トランプ大統領と習近平国家主席の会談が行われ、2019年1月1日から予定されていた、追加関税の25%への引き上げ(すでに18年9月から、5745品目、約2千億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を課している)の90日間の留保が決まった。中国側は、米国から相当量の農産品、エネルギー製品、工業製品を輸入することに合意し、90日間の留保期間中、米中は、強制的技術移転、知的財産権の保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス・農業の5分野について交渉を開始することも決まった。
つまり、米中関係の悪化は“少し先送りになった”といえる。日本の新聞各紙は、これらの合意について評価しながらも、交渉は90日間で終わらず、やはり両国の関係は悪化するのではないかと懸念を示し、現にその後、米国側は、より強硬姿勢で臨む、との姿勢を表している。
G20の期間、日本にとっての目玉の一つが日ロ首脳会談だった。会談を経て、北方領土の問題において、両国の外務大臣が担当して協議を重ねていくことが具体的に決定した。
安倍晋三首相は、“安倍・プーチンの時代に北方領土問題を解決したい”と発言している。“2島プラスアルファ”を主張しているのだが、日本のメディアは“具体化は難しいだろう”と否定的に捉えている。現にプーチン大統領は“2島は返還するが、主権は譲らない”と主張している。主権が日本に戻らないのであれば、返還されたとはいえない。
北方領土問題に精通し、私が信頼している人物は、プーチンが主権にこだわるのは、日本に主権を譲れば、日米地位協定によって米軍が2島に基地を置くことになるからだ、という。これはプーチンとしては絶対に認められないはずだ。ところが、その人物は、すでにこの点について安倍首相とトランプとの間で話し合われていて、安倍首相はそこでかなりの手ごたえを得ているのではないか、だからこそ、プーチンに“2島プラスアルファ”を主張できたのではないか、という。19年1月に日ロ首脳会談が開催される予定だが、そこで北方領土の話がかなり具体化されるのではないか、と見ているのだ。