「バーバリー」の店舗前を歩く人たち(2016年、大阪市) (c)朝日新聞社
「バーバリー」の店舗前を歩く人たち(2016年、大阪市) (c)朝日新聞社

 英国のバーバリーが9月、売れ残り商品の廃棄処分をやめると決めた。約41億円分の廃棄が7月に発覚後、2カ月足らず。業界での長年の慣行だが、短期間で見直しを決断した。ブランド価値を守るはずだった行動が、逆に価値を損ねる。そんな新たな変化に直面する企業の姿が浮かぶ。

 同社は9月6日、「社会的、環境的な責任がある」として、今後は焼却処分をやめて再利用や寄付に努める方針を発表した。合わせて、毛皮を使った商品の販売もやめる考えを示した。

「動物環境・福祉協会Eva」(東京都)の代表理事として毛皮反対を訴えてきた、女優の杉本彩氏はこう指摘する。

「動物福祉の先進国と言われる英国のブランドとしては、他国のハイブランドよりいささか遅い決断ではあったものの、今回の賢明な決断を高く評価します。近年、プラスチックのゴミによる生物や環境への被害の問題をはじめ、畜産による環境破壊、エシカル消費などについて、真剣に取り組むことが(企業の)必須の課題です」

 毛皮の販売だけでなく、売れ残り品廃棄を続けてきたバーバリー。しかし、廃棄を「やむを得ない」とみていたアパレルメーカー勤務の男性はこう話す。

「バーバリーのようなハイブランドは、高級、高品質、希少というイメージを崩さないことに細心の注意を払います。アウトレット品にすると、コピー品と思われ、採算が取れません。残された道は廃棄になるのでしょう。在庫品の割引や寄付などをしてブランド価値を下げることは、バーバリーには合わなかった。焼却は、当然といえば当然の行動でした」

 業界全体の悪弊を指摘する声もある。アパレル企業で在庫管理を担当する女性は「バーバリーだけが悪いわけではない。業界全体で春夏秋冬、季節物の服をつくり、売れなければセール、売れ残りは廃棄する循環がある」という。

 バーバリーは7月、売れ残った洋服やアクセサリー、香水など約41億円分の焼却処分が発覚。毛皮の商品もあったため、動物愛護団体などから批判を浴びた。

 毛皮商品の販売中止は、グッチやヴェルサーチなどのハイブランドが先行している。バーバリーのマルコ・ゴベッティCEOは毛皮の販売や廃棄の中止に関し、「現代のラグジュアリーとは、社会的・環境的な責任を持つことを意味します。これはバーバリーの核となる信念であり、長期的な企業の展望において極めて重要です」とコメントした。

 バーバリーの転換が、業界の新たな流れを加速させることになるのだろうか。(本誌・田中将介)

※週刊朝日オンライン限定記事