「ソーシャルメディアやブログを監視、検閲、遮断する政府の権限を強化し、政治的、社会的、宗教的規範というあいまいな基準に反する行為を犯罪化するための法律である」
と、強く非難している。「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」も声明を発表し、この法律以外に、15年に成立したテロ対策法も政府の言論弾圧に利用されていると批判する。
またこの法律では、規制当局から許可を得ずにウェブサイトを設置することも禁止され、規制当局には、不適切と判断したウェブサイトの遮断や、編集者に罰金を科す権限が与えられている。政府がネット上の言論統制の強化を意図していることは明白だ。
エジプト政府が強硬なソーシャルメディア規制を進める背景には、10~12年にかけて、アラブ世界を席巻した民主化運動「アラブの春」への恐れがあるのだろう。当時、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアが、政権批判の拡散やデモの呼びかけに活用され、独裁政権の打倒に重要な役割を果たした。
フェイクニュースに悩む自由主義国家を尻目に、権威主義国では強硬なネット規制が進んでいる。今後のネット言論を巡る状況は、二極化が進んでいくのかもしれない。
※週刊朝日 2018年8月10日号