教団内では自治省大臣を務め、施設警備や麻原警護のほか、脱会しようとする信徒を連れ戻したり、監禁したりする「裏部隊」のリーダー役も担った。
麻原への強烈な「忠誠心」から、坂本弁護士一家殺害事件や、松本サリンと地下鉄サリン事件、田口修二さん、落田耕太郎さん、冨田俊男さんら信徒の殺害事件、VX殺人事件など、残虐な事件にも積極的に関与していった。
逮捕の直後には、
「これも修行と思っています。これから黙秘します」
と取調室のいすであぐらを組み、瞑想を続けた。
裁判の人定質問で職業を尋ねられた時は、
「麻原尊師の直弟子です」
と答え、事件については、
「グル(麻原)の指示であれば、人を殺すことに喜びを感ずるようでなければならない」
「一殺多生。(被告人は)最大多数の幸福のためのやむを得ぬ犠牲である」
と公言してはばかることがなかった。
かつて、教団内で麻原に寵愛されていた井上嘉浩死刑囚は、新実の裁判に検察側証人として出廷した際、
「新実さんも本当は(誤りに)気づいているのに、見ていて悲しい」
と語った、新実の部下の自治省次官で、地下鉄サリン事件の運転手役を務めた杉本繁郎受刑者も、
「教団を否定するのがつらいのではないか」
と心中を推し量った。
新実自身は一審の死刑判決後、弁護人を通じてこんな短歌を公表している。
「人は皆 時の定まぬ 死刑囚 会って別れて 夢と消えゆく」
判決の前日に、死刑判決が下ることを予想して作った歌だという。
上告中には麻原の四女への手紙でこんなこともつづっている。
「私が使役執行された際は、報身(教義上、夢の中で使える仮想の身体のこと)で尊師やシヴァ大神とコンタクトされ、意識の転移の件宜しく御願いしますね」
上告は2010年1月に棄却され、死刑が確定した。被害者への心からの謝罪と反省の言葉は、最後まで聞かれなかった。
教団で最も血なまぐさい男の「マインドコントロール」は最後まで解けることはなかった。