3作目となる今回の『THE ASHTRAY』の幕開けは「808」。“808”は、ドラム・マシンのTR-808に由来するらしい。「STAY TUNE」と似た曲調で、これもホンダのCMに起用された。
歌詞も皮肉たっぷりだ。“偽物ばかりのジョーク張り合わない”“言葉を並べて どうだい?”“言い訳ばかりだ”“食い散らかし”といった言葉は、似通った情報を垂れ流すテレビのワイドショーや、ネット上の空虚な“つぶやき”を想起させる。サビの“Everything is Everywhere.”の部分では、“拙い曲の~言えない そういうの”と聞こえる。歌詞を見たら“拙い 興 苦悩”“癒えない そう you know?”と、当て字になっていた。どこにだって同じようなものばかり、どれもこれもが似たような曲ばかり――という昨今の音楽シーンへの批判が読み取れる。
2曲目は、NHKのサッカーテーマに選ばれた「VOLT-AGE」。爆音ギターに始まるギター・ロック・ナンバーだ。シンプルなメロディーの繰り返しは、スポーツの応援歌として演奏されることが多いクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を思わせる。歌詞には、“Chanting”“pitch”“Sunrise blue”といったサッカーっぽい言葉が続く。サッカー好きだというYONCEのW杯への思いを描いた曲だ。
「FRUITS」は、メローなソウル・ロック。レゲエを基本に、スティーリー・ダン風のギター・リフ、バックにスティーヴィー・ワンダーを思わせるソウルフルなシャウトも。YONCEの落ち着いた歌いぶりやバンドの演奏から、各メンバーの成熟ぶりがうかがえる。両親や兄弟、姉妹への思いを描いた歌詞を含め、普遍的なラヴ・ソングに仕上がっている。
「YOU’VE GOT THE WORLD」では一転、ドラマチックな展開を見せる。ストーン・ローゼズを思わせる曲だ。