落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「OB」。
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大卒の私には四つの母校がある。つまり私は四つの学校の『OB』だ。寄付金などを納めたことは一度もないなぁ。全ての学校に公平にないのだからケチじゃない。「筋が通っている」としておいてほしい。
野田市立中央小学校。明治6年創立の歴史ある学校。私がいたころはマンモス校だった。1年時には生徒が1700人くらいいた、が100人単位で年々減少。ゆえに「♪千○百の子供たち~」というふうに「創立記念日の歌」の歌詞の○が毎年変わる。校庭が馬鹿でかく、校舎がお化け屋敷みたいな古風な洋式建築。つがいのクジャクを飼っていたが、求愛の鳴き声がうるさくて授業にならない。野良犬がよく侵入し、生徒がパーティー状態になり、やはり授業にならなくなる……そんな学校だ。
野田市立第二中学校。「二中魂」というスローガンがある(あった?)のだが「あいさつ」「思いやり」「休まない」という、どう考えても「休まない」は今の時代にそぐわないブラックな響き。しかしそのころはちょっとやそっとじゃ本当に休まなかった。「かけ声清掃」なる慣習があり、清掃時には生徒が「いーちに、さーんしっ!!」と声を合わせて怒鳴りまくる。口からホコリが入りまくり絶対身体に悪いはずなのだが、誰も疑問に感じずひたすら雑巾がけをする。合唱が大好きで、修学旅行のメインイベントは京都の夜景を前にしての大合唱大会。さぞ他の観光客は迷惑だったことだろう……そんな学校。
埼玉県立春日部高等学校。伝統ある男子校だが、同県内の浦和高校に対するコンプレックスが過剰。学ランで校舎は土足。古い、汚い、臭い、傾いている(今は新校舎で奇麗)。体育の指定ジャージが存在しない。冬でも半袖短パン。暖房器具さえなく(今はあるらしい)、真冬はオーバーを着て授業を受け、暖房導入の話があるとそのたびにOB会が反対する。暖房があれば勉強の効率も上がって、「憧れの」浦和高校に近づけたんじゃなかろうか? ……そんな学校である。