妻:あの子が知らせてくれなかったらどうなっていたことか。そう思うとぞっとしますね。
夫:感謝しかないね。
妻:シャクティと私は、あの子が死ぬまで仲良くなれずじまいでしたけどね。でも、彼はあれは名犬だ、恩犬だ、って。
夫:そうだよ。
妻:救急車呼んだのは誰?そこは犬じゃないでしょ!って言うんですけど(笑)。
夫:ははは。でもね、シャクティをなくして落ち込んでいたら、彼女が僕のためにサプライズパーティーを企画してくれたの。
妻:あまりにもしょげてたんだもの。
夫:うちの店を貸し切りにして、友人を30人ぐらい集めて、励ます会を開いてくれた。うれしかったなあ。
妻:みなさんに感謝よ。
夫:ちゃんとお金払ったんでしょ、店に。
妻:当然ですよ。息子から「まいどあり」って言われましたからね!
夫:まあ、いろいろあった人生ですけどね、もう何にも怖いものはないですね。女房ぐらいだな。
妻:あら、私?
夫:彼女は仕事の同志であり、お母さんみたいなもの。育ててくれたようなものです。ちょっとばかりわがままな男だけど、それを母のような無償の愛情で受け入れてくれた。
妻:ちょっとばかりですって!?(笑)
夫:僕は、趣味は「自分」。地球は自分を中心に回ってると思ってますから。
妻:天動説も地動説もありゃしないですよ。息子たちが言うんです。お願いだからお母さん、1日でいいからおやじより長生きしてって。アレを残されたんじゃたまったもんじゃないそうよ。
夫:いやほんと。長生きしてくださいよ。
(聞き手/浅野裕見子)
※週刊朝日 2018年3月30日号より抜粋