田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書。田原総一朗氏は、政権を揺るがす問題だと指摘する(※写真はイメージ)「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書。田原総一朗氏は、政権を揺るがす問題だと指摘する(※写真はイメージ)
「文書書き換え」が明らかとなった学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書。ジャーナリストの田原総一朗氏は、政権を揺るがす問題だと指摘する。

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 3月8日、財務省は森友学園への国有地売却に関する決裁文書の写しを参院予算委員会に提出した。

 決裁文書と、国会議員たちに開示した文書とは異なっていて、書き換えられているのではないか、と野党が強い疑念を抱き、国会が紛糾し続けていたのだ。きっかけは、3月2日に朝日新聞が1面トップで大きく報じた疑惑であった。

 朝日新聞が確かめたところ、決裁文書と、その後、国会議員たちに開示した文書の内容に違いがあることがわかったという。

「契約当時の文書には学園とどのようなやり取りをしてきたのかを時系列で書いた部分や、学園の要請にどう対応したかを記述した部分があるが、開示文書ではそれらが項目ごとなくなったり、一部消えたりしている。(中略)財務省は国会で学園との事前の価格交渉を否定し続けているが、『学園の提案に応じて鑑定評価を行い』『価格提示を行う』との記載もあった。開示された文書では、これらの文言もなくなっている」(3月2日付朝日新聞)

 朝日新聞がこれほど自信を持って書き切るということは、契約当時の文書、つまり原本のコピーを入手しているのであろう。

 朝日新聞によれば、両方の文書ともに決裁印が押されているという。となると、書き換えは公文書偽造にあたる疑いがある。

 その原本について麻生太郎財務相は、文書は森友学園の土地売却問題を調べている大阪地検に提出しているため、書き換えられたのかどうか確認のしようがない、と国会で繰り返し述べている。財務省の担当幹部も、「捜査に影響が生じるので介入できない」と答えている。

 だが、こうした答弁はまったく説得力がない。国会が文書を提出せよ、と要求すれば、大阪地検には拒否する権限はないはずであり、何よりも財務省の担当官僚に問い合わせれば、書き換えがあったのかどうかは確かめられるはずである。

 
 このような、つじつまの合わない答弁を繰り返していると野党は国会への出席を拒否し、安倍内閣自体が危なくなるはずである。

 何人かの自民党幹部に、この文書問題についてオフレコで問うた。誰もが、朝日新聞があそこまで自信を持って書くのは文書のコピーを入手しているためであり、そして誰もが財務官僚の何者かが、朝日新聞にリークしたとしか思えない、と言った。それ以外の手段で文書を入手できるとは考えられない、というのだ。

 では、なぜ財務官僚が安倍内閣にダメージを与えるような行動をしたのだろうか。財務省の事情に詳しい元政治家は「森友学園の土地売却で、価格を8億円以上安くした。これは財務省の安倍内閣に対するとんでもない忖度(そんたく)だ。文書の書き換えも、忖度ゆえの公文書偽造だ。これでは財務省が情けなさすぎると感じた単数か複数の財務官僚がリークしたのではないか」と語った。

 3月8日、なぜか財務省は、決裁文書として国会議員に開示されたのと同じ内容の文書を国会に提出した。これが唯一の文書だ、というのであろうか。

 となると、朝日新聞のスクープが事実でないことになり、朝日新聞としては、確かな根拠ありと示す必要が出てくる。だが、このように朝日新聞を追いつめるのは、実は安倍内閣自体が追いつめられることになるのではないか。

週刊朝日 2018年3月23日号