ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
スノボー界へオカマからの祝福。『スタイル出てたし! 超お洒落だし!』(※写真はイメージ)
ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「スノーボード」を取り上げる。
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「平昌、寒いです!」って、「そりゃそうでしょ」と思いながらもやっぱり観ているオリンピック。現時点で最も熱狂したのがスノーボード男子ハーフパイプです。昔、マツコさんと「スノーボード元男子ニューハーフパイプカット決勝!」とかバカなネタをやっていた私は、当然のごとく雪山といったらスキーの世代なわけで、スノボーに触ったことも乗ったこともありません。
スケボー、サーフィン、スノボーを『横乗り文化』と呼ぶそうな。まんま私が通ってこなかった3大文化です。故にオトナになってから見ると、実に興味深い! やたら名前に『夢』が付く選手が多いところや、記号的に見えるファッションなど、『二丁目文化』と同じくらいの先入観を掻き立てられます。ダルそうな半面、仲間意識や地元意識は人一倍強く、環境問題や食品添加物、はたまたチベット問題にも熱い想いを抱いている。ざっとそんなイメージの中、とにかくオリンピック特有の「品行方正、健気でひたむき!」な文脈にフィットしないヒヤヒヤ感が観ていてたまらないのです。
オリンピックとスノボーがどこでどう折り合いを付けるのか、もしくは付けないのか、それを見守るのが4年に一度の楽しみでもありました。そして今回、平野歩夢選手が2大会連続でメダルを獲得したことで、ひとつの結果が出たような気がします。簡潔に言えば『スノボーの勝ち』です。これでもう誰も『五輪のスノボー』に文句は言えないでしょう。思えば長い戦いでしたが、彼らは自分たちの流儀を貫きました。それはただツッパリしているのではなく、『誰もが皆、無闇やたらとオリンピックを特別視しているわけではない。オリンピックだけが人生ではない』というとても大事な真実を教えてくれたように思います。だからこそ、無理矢理こしらえたような物語(ストーリー)抜きの本当の臨場感がありました。考えてみればどの競技にしたって、「この日のために4年間頑張ってきた」という感動は、半分以上が『4年に一回しか真剣にその競技を観ない』世間側の勝手な言い分なのです。
小池百合子さんもどうせやるならこれぐらい徹底しないと。カタカナ一個でドヤ顔してる場合じゃありませんわよ。
※週刊朝日 2018年3月2日号