ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「石原さとみの盲点」を取り上げる。
* * *
カメラ目線で語りかけるCMができるかできないか。私が勝手に決めた『一流芸能人の基準』です。もちろん私は経験ありません。せいぜい白髪染めの使い易さを(映っていない)相手に語るぐらいなもので、あとは歌ったり踊ったり、鏡に向かって愚痴ったり。私がカメラ目線で、「ねえ? 使ってみたら?」などと語りかける日は、果たして来るのでしょうか?「使ってみる」って何よ?ハロウィン仕様の付け睫毛? カミソリ負け知らずの電気シェーバー?
それはさておき。『カメラ目線CM』の帝王として思い浮かぶのは、やはりビートたけしさんです。現在も予防医学企業のCMで「一回きりの人生だ。しっかりやれよ、おい!」と活を入れてくれていますし、ライフプランナーという職業に疑問を投げかけてみたり、「Why not? ECC」に至っては全編英語でカメラ目線でした。もはやどんな商品や企業でも、たけしさんのネームバリューと説得力ならば、すべてこの手法で収まりそうです。「痛ぇのか? だったらこれ飲みな」(頭痛薬)、「崩れないファンデーションってのはさ、やっぱりありがたいんじゃねえか? おいらにゃ分かんねえけど」(化粧品)、「とっとと売っちまえよ、バカヤロー!」(フリマアプリ)。どうです?どれもあっておかしくなさそうでしょ?
それでも日本のテレビCMがビートたけし一色にならないのは、同じように日々カメラ目線で語りかけている人たちが他にもいるからです。まずは、密かに私が『語りかけ専門俳優』と呼んでいる向井理さん。起き抜けの鶏がらスープからガセリ菌、そして共済に至るまで、あらゆるものをカメラ目線で訥々と説明し勧めてきます。何なのでしょうか、あの涼しい顔してグイグイ来る押しの強さは。その内『au三太郎シリーズ』も、向井理による『絵本読み聞かせオチ』だったという結末を迎えそうです。もちろんカメラ目線で。「めでたし。めでたし」かなんか言って。次世代型の森本レオなのかもしれません。
そしてもうひとり、カメラ目線の女王と言えば石原さとみです。彼女の場合、さらに『隣目線』『テーブル越し目線』なる最強ポジションも持ち合わせています。老若男女問わず、日本中が石原さとみとデートをしている状態。ドライブして、地下鉄に乗って、チョコを食べて、女子会で化粧直しして、鏡月を呑む。そのほとんどが、『なりたい顔』ナンバー1でなければ許されないであろう言動に満ちています。上司のお酒を作りながら「私だってバブル知ってるんですからぁ! ま、2歳だったけど」なんて『石原さとみ流ノリツッコミ』に代表される、おっちょこちょいで騒がしくて失礼、だけど誰よりも可愛い。そんな確固たる自我の下、石原さとみは許され続けているのです。さらには「いざとなればエロ全開よ」という含みも惜しみなくチラつかせているため、もうしばらくは彼女の独壇場は続くと思われます。
しかし最近、ある弱点に気付いてしまいました。それは『石原さとみって、英語を喋りたがる系の女』だということ。しかも、その英語が向上心剥き出しで全然可愛くない。スキルアップなんて必要ない人生、それが石原さとみのはずなのに。どうか外国人相手にも自慢の唇ひとつで勝負して頂きたいものです。
※週刊朝日 2017年7月14日号