リメンバー・ラジオ・デイズ
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(もし、いたらの話ですが)放送音源初心者にこそ聴いてほしいラジオの日々
Remember Radio Days (Mega Disc)

 これまで何度か書いてきたことだが、いまさらオーディオや音質について云々するのは、ちょっと恥ずかしいという思いがある。だって粗末な再生装置でボロボロの盤質のジャズやロックを聴いて人生が変わったのだから、少々オトナになったからといって「音がどうの」「オリジナル盤がこうの」などとシャーシャーとのたまうのは、「オレの若いころはイモしか食べるものがなかったんだぜ」とかなんとか赤ら顔でほざきつつ中級ワインを音を立てて口に運ぶ脂ぎった上司・63歳・野々山為五郎と同じくらい恥ずかしく、かつ矛盾を感じる(以上『読んでから聴け!ジャズ100名盤』P176をリミックスしました)。

 ましてや音なんか悪くてあたりまえ、音がいいブートなんかありっこない時代に育ったブート初期世代右代表のような人間が、「ほほ~デジタル・リマスターされて音がよくなったのか」とか「シャキンッと引き締まった音に生まれ変わったなあ」とか先の野々山為五郎的展開を踏襲するのはどうかと思うが、この放送音源を集めたラジオな企画盤、なかなかの音質向上ぶりが頼もしく、すでにマイルス地獄の住人を長くやっているマニアからすれば珍しい音源は見事なまでに入っていないものの、「そうか、そこまでいうならもう一回聴いてみようか」という気を起こさせるに十分なものがある。

 音源を整理しておけば、前半4曲は4枚組ボックス・セット『レジェンダリー・プレスティッジ・クインテット・セッションズ』(聴けV7:P96)、後半5曲は『カフェ・ボヘミア1958』(同P128)に収録されていたもの。ただし前述したように音質がヴァージョンアップされた気配があり、もともと悪い音質ではなかった上にさらに強度も増して聴きやすくなったような気がする。とはいえ、すでに前記2枚の所有者は焦って入手する必要はなく、放送音源初心者(っていますか?)ならびに「エレキ・マイルスなんか好かん!」「もっと50年代クインテットのライヴが聴きたい!」「しかしながら4枚組には手を出したくない!」というアコースティックなマイルスを愛するアコースティックなファンにこそ推薦したいとの思いを込めて、ここに改めてのご紹介となった次第。公式盤ではほぼ皆無に近いジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ時代のクインテットのライヴが簡便に聴ける喜びは大きい。司会者の喋りが入っているのも、いかにも実況放送らしい雰囲気を高めている。みるからにセピアな古き良き時代を偲ばせるジャケットもなかなかに秀逸。

【収録曲一覧】
1 Max Is Making Wax (aka Chance It)
2 It Never Entered My Mind
3 Tune Up
4 Walkin'
5 Sid's Ahead
6 Bye Bye Blackbird
7 Straight No Chaser (incomplete)
8 Bag's Groove
9 All Of Me
(1 cd)

1-4:
Miles Davis (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds)

5-7:
Davis (tp) Cannonball Adderley (as) Coltrane (ts) Garland (p) Chambers (b) Jimmy Cobb (ds)

8-9:
Davis (tp) Adderley (as) Coltrane (ts) Wynton Kelly (p) Chambers (b) Cobb (ds)

1-2:1955/11/17 (not 10/18)(NY)
3-4:1956/12/8 (Philadelphia)
5-7:1958/11/1 (Washington DC)
8-9:1959/1/3 (NY)

★1-4:issued on 『Legendary Prestige Quintet Sessions』(Prestige/Concord)
5-9:issued on『Cafe Bohemia 1958』(Mega Disc)

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