錦織:故郷をそのまま脚本にしたら、みんなが「こんなの非現実的だ、ファンタジーだ」と言ったので、島根へ来てみてください、と。

溝口:錦織さんの島根で撮った映画を見ると、地域の人々の生活やものの考え方もよくわかります。島根の良さを的確に表現されて、HIROさんもそうですが、映画を見た多くの人が島根に興味を持っていただいている。映画と地域おこしがつながる、想像できなかったような邂逅があったと思います。人口減少の流れが政府による地方創生の政策につながったわけですが、若い人を増やすことは県の重要な課題です。そのために文化・歴史を通して島根など地方の良さを発信していかなければならない。錦織さんはそれを映像で伝えてくださっている。

──「たたら侍」はモントリオール世界映画祭の最優秀芸術賞に輝きました。

錦織:トロフィーを持ってきました、知事に持っていただきたいと。観客の多くは出雲の景色をスクリーンで見て、なんて美しいんだと驚いてくれました。「渾身」をベトナムで全国上映したときも若者たちは「自分たちが知る日本はハイテクなイメージとアニメで、クールジャパンのイメージ。こんなに自然が豊かなところだったら行ってみたい」と言ってました。現地の経済界の方も「こういう映画をもっと日本から発信してほしい」と言われました。映画が国際的な評価を得るのは、正直うれしいです。でもそれは、高校の恩師から「島根がすごいだけで、おまえはそこを撮らせてもらっているだけだからな」と言われたように島根のおかげだと思っています。

HIRO:これからもどんどん映画で島根の良さを伝えてもらいたいです。僕たちも様々な角度から島根の素晴らしさを発信し続けます。

週刊朝日  2017年4月21日号