島根県に伝わる「たたら製鉄」。千年を超えて続く職人魂を描いた5月20日公開の時代劇映画「たたら侍」を巡って、地元出身の錦織良成監督、溝口善兵衛・島根県知事、映画のエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたEXILEのHIROさんが、地域の価値を伝えるエンターテインメントの力について語り合った。
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──HIROさんが島根に関心を持ち始めたのは、映画「渾身(こんしん) KON-SHIN」からだそうですね。
HIRO:映画を見たことがきっかけです。島根のきれいな情景に感動して、隠岐に古典相撲のルーツがあることも初めて知りました。映画に主演した青柳翔(劇団EXILE)にも話を聞いて、錦織監督に会わせていただきました。
錦織:2002年公開の「白い船」から島根を舞台に撮り始めて、離れていた故郷のいいところがたくさん見えてきた。そのときの感動をそのままHIROさんにぶつけたら、ビビッドに反応してもらいました。
HIRO:島根の素晴らしさを、熱く語っていただきました。錦織監督の熱意に心が躍って、わくわくしました。それからです、頻繁に島根に行くようになったのは。
錦織:たたら製鉄の操業所にHIROさんをご案内したとき、「かっこいい! こういうことを若い人にもっと知らせたほうがいい」と言ってくださって、本当にうれしかったですね。
HIRO:映画「もののけ姫」でも題材になった、たたら製鉄はこれだったのか!と。子どものころから聞いていたヤマタノオロチとか神話の舞台も島根とつながって、ますます興味がわいてきました。製鉄や古典相撲だけでなく、日本酒や歌舞伎、和歌の発祥地と言われていることも教えてもらいました。日本文化のルーツの宝庫ですよね。
溝口:和歌はスサノオノミコトが初めて詠んだということのようです。古い時代は進んだ地域だった。それが壊れずに受け継がれている。それが島根の良さだと思います。私も島根で生まれたのですが、大学進学で東京に出てから県外に住んでいて、知事になるまで故郷のことをあまり知りませんでした。県内をくまなく歩いてみると、人々が豊かな自然と一緒になって生活をして、古い文化や歴史が受け継がれていると実感しました。「たたら製鉄」も伝統的なやり方を受け継いで作っている。そこに錦織監督が注目して、「たたら侍」をお作りになった。映像にすると非常にわかりやすく伝わります。そしてHIROさんが映画をサポートしてくださった。大変感謝しております。