「電気使用量のお知らせ」を見てほしい。
電力会社から毎月送られる明細は、表面に目を通しても裏面を見落としがち。しかし、よく見ると、原発の使用済み燃料の再処理などに充てる費用や、中間貯蔵施設の建設などに充てられるお金をすでに徴収されていることがわかる。
さらに今回の見直しで、託送料金を通じて上乗せされる額がまた増えることになる。
今は月18円、年216円の追加負担の見通しだが、この額でとどまる保証はない。9日示された総額21.5兆円の試算は、まだ膨らむ可能性がある。前出の大島教授は言う。
「現在の廃炉方針では、事故で発生した核燃料デブリを40年以内に取り出すことになっています。ですが、取り出せても、新しく放射性廃棄物の処分場を造らなければなりません。今回の見積もりにその費用は含まれていません。その施設を造るだけで、青天井の予算が必要です。今後も費用が増え続けるのは、確実です」
経産省が新たな試算を出す前の7日、与野党の超党派国会議員でつくる「原発ゼロの会」の会見では、自民党の河野太郎衆院議員が「自民党からも経産省への強い不信感が出ている」と批判の声をあげた。
世耕弘成経産相は9日の会見で、「状況変化や予見できなかった要因で、増加することもありうる」と発言。費用がさらに増大することをすでに示唆する。
原発は重大事故が起きないとの“神話”のもとで、運転されてきた。十分な賠償の備えはもともとなく、事故後はどんぶり勘定でのお金の出し入れが続く。
どんぶり勘定の語源は、食べる器ではなく、かつて職人たちがよく使った道具入れの腹掛けから、無造作にお金のやり取りをしていたこととされる。
一般家庭分だけでも8兆円にのぼる電気料金の差配は、経産省にとって腹掛けに手をつっこむぐらいの感覚なのだろうか。
※週刊朝日 2016年12月23日号