日米同盟をめぐるトランプ氏の「妄言」を裏付けるような分析だ。しかし、なぜ、米国は東アジアを見放そうとしているのか。状況を読み解くカギは「地政学」にあるという。
地政学とは「覇権国が世界をコントロールするため、地理を活用する戦略的視点」(奥山氏)で、かつて英国も古代ローマに倣って実践。米国の地政学では、自国を「島国」と捉えた。ユーラシア大陸の脅威に対峙するには、西欧、中東、東アジアと大きく3地域に分けて、その沿岸部と縁海に軍事基地を展開する。在日米軍は中でも重要なポイントだ。
元陸上自衛隊北部方面総監の志方俊之氏は、在日米軍についてこう解説する。
「例えば、沖縄の基地を中心にしてコンパスで円を描けばわかります。円内には台湾や朝鮮半島、日本が入る。そこをカバーしつつ、偶発的な衝突も避けられる、つかず離れずの位置なのです」
米国は戦後、3地域それぞれを押さえてきたが、転換期が訪れた。まず、中東政策の失敗だ。イラクに軍事干渉をした結果、逆に同国は混乱。シリアでも同じ過ちを繰り返した。その結果、米国内での自爆テロリスクが高まった。さらに、米国でシェールガス・オイルの本格生産が開始。エネルギーを自国で賄える可能性が高くなった。こうして中東の重要性が薄れ、その分、東アジアに軍事力を振り向けるはずだった。
しかし、プーチン大統領率いるロシアは、そのすきを見逃さなかった。