
全マイルス・ファン必聴の最高クオリティ・ライヴ盤!
Oriental Afrobeat (Hannibal)
まさかこのような日がやってこようとは。マイルスの2009年、フランスはパリでの一大回顧展、驚異の廉価ボックス・セットと、局地的ながらも異常に熱い盛り上がりをみせているが、ついに真打ち登場といってもいいだろう。全マイルス・ファンは残らずこのライヴ盤を聴き、腰を抜かしてほしいと、年末に向かって激しく咆哮しておこう。
この日のライヴはこれまで『アナザー・ユニティ』として出ていた。そして拙著『マイルスを聴けV8』において、次のように激賞した。「『ダーク・メイガス』、聞こえるか。『アガルタ』、起きてるか。『パンゲア』、おおそこにいたか。全員集合。キミたち、長い間、お勤めご苦労さん。今後30年間、休んでよし。そうなのだ、この『アナザー・ユニティ』があるのだ」。しかしその『アナザー・ユニティ』にも休日を与えるときがやってきた。だからこの場を借りて『アナザー・ユニティ』に伝えよう。『アナザー・ユニティ』よ、聞こえるか。長い間、ご苦労さん。我々人類は『オリエンタル・アフロビート』を手に入れたのだ。よって半永久的に休んでよし。
丁寧な仕事で知られるハンニバル・レーベルから登場した『オリエンタル・アフロビート』は、タイトルはイマイチながら、名盤『アナザー・ユニティ』を凌駕する、これぞまさしく決定盤。いわゆるリマスターとか「うまいコピー物」ではなく、まったく別ソースにあたるステレオ・サウンドボード・マスターが使用されている。したがって、たとえば冒頭の《プレリュード》で目立った音揺れもなく、音質、バランスともに上回り、それぞれの音が緊密かつ有機的に機能していることが鮮明に記録されている。決してオーヴァーでなく、これは『アナザー・ユニティ』のヴァージョンアップとして捉えるよりも新たな音源として接したほうがいいだろう。
具体的にどこがどうなったか。『アナザー・ユニティ』も最高音質ではあたっが、全体が整然とまとまり、生々しさに欠けるといえば欠けた。75年バンドを実際に体験した者の特権としていわせてもらえば、ややおとなしかった。ところが今回のハンニバル盤は全体的にラウドでリアルかつ、いかにもライヴな臨場感が前面に押し出され、そうそう、これが実際に聴いた75年バンドだったとの思いをより強く抱かせる。本来はリマスターごときで大騒ぎしない性格だが、これは別物・別次元ゆえ騒ぐことにした。
【収録曲一覧】
1 Band Warming Up~Prelude
2 Maiysha
3 Ife
4 Mtume
5 Turnaroundphrase
6 Tune In 5 / Willie Nelson
7 Untitled Tune
(2 cd)
Miles Davis (tp, org) Sonny Fortune (ss, as, fl) Pete Cosey (elg, per) Reggie Lucas (elg) Michael Henderson (elb) Al Foster (ds) Mtume (per)
1975/1/22 (Tokyo)