フィナステリドは医療用医薬品。入手するなら、医師の診断と処方箋が必要だ。

 通院不要の外用薬もある。「ミノキシジル」という成分が含まれる発毛剤だ。どんな“汁”かと思ったら、一般用医薬品としてドラッグストアなどで売られている「リアップ」(大正製薬)などがそれだった。こちらは男性ホルモンの作用には影響しないという。板見教授が続ける。」

「毛乳頭細胞を標的にするという点では、フィナステリドと同じです。ミノキシジルは毛乳頭細胞に働きかけ、毛の成長を促進する因子を誘導します」

 ミノキシジルを5%配合した薬品が標準的だが、多様な商品群の中には「12%配合」や「16%配合」なんてものもある。なるべく高濃度の薬を選べば、髪がふっさふさになる……と思ったら、そうでもないらしい。

「大量に配合されていても十分には溶けず、毛乳頭細胞まで届きません。たくさん入っていれば効くというようなキャッチコピーで売っているだけで、科学的根拠はありません」

 安易な考えにピシャリ。日夜、薬を塗っている先輩記者が財布と頭皮に余計なダメージを受けているのではないかと心配になった。

 フィナステリドは脱毛の抑制。ミノキシジルは成長の促進。副作用はどうか。

 フィナステリドは元来、前立腺肥大症の薬だった。男性機能の低下や性欲の減退が副作用として考えられるという。先輩、ヤバいっす。ただ、副作用の程度はごく軽いと言われている。

 ミノキシジルは元々高血圧の薬だった。その副作用に多毛が見られたため、発毛剤として使われるようになった。血圧が低い人は注意が必要という。

 実は最近、新しい薬品が登場している。「デュタステリド」だ。AGAは、細胞内の還元酵素によって男性ホルモンが変換されるのが原因だが、さらに詳しく言えば、還元酵素には2種類ある。

「フィナステリドはそのうち1種の阻害剤。デュタステリドは2種とも阻害できます。新しい治療手段が加わったと考えていいでしょう」(板見教授)

 板見教授が勧める治療のうち外科的治療とは、「自毛植毛」。かつては「人工毛植毛」もあったが、拒絶反応や炎症を招く恐れがあり、日本皮膚科学会の「男性型脱毛症診療ガイドライン」では「行わないよう勧められる」とされている。

 自毛植毛は、髪の毛が生えている後頭部の皮膚を切除→毛髪をつくる毛包ごとに株分け→頭の脱毛部分に移植……という手法だ。術後、抜けては生えるというサイクルを繰り返し、数カ月で効果が実感できるという。ただし、保険は適用外。移植の範囲にもよるが、費用は数十万~150万円くらいかかるそうだ。

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