「両殿下はずっと中腰の体勢で、椅子に座った入居者と同じ目線で会話を続けていらっしゃいました」
天皇、皇后両陛下や秋篠宮ご夫妻を思い起こさせるような光景だった。
こんなことがあった。2008年に大分県で開催された全国障害者スポーツ大会。開会式前日のレセプションでは、いつも皇太子さまと選手の懇談がセットされている。皇太子さまは、車椅子に座った選手らと短く会話を交わすものの、懇談の時間を5分ほど余らせて、会場をあとにした。
皇太子ご夫妻が、設定以外の懇談や時間を超えて、積極的に対話をすることは過去にほとんどなかった。だからこそ、皇室取材を長く続ける記者たちは、今回の皇太子ご夫妻に何かの兆しを感じたのだ。
<悲しみも包みこむごと釜石の海は静かに水たたへたり>
雅子さまは、14年の歌会始に、前年秋に釜石市を訪れた際の想いを詠んだ和歌を選んだ。前に踏み出す歩みはわずかかもしれないが、ご快復ぶりを喜びたい。
※週刊朝日 2016年7月8日号