滋賀県の大津地裁は3月、運転中だった関西電力の高浜原発の停止を求める仮処分決定を出した。関電に対し、地震・津波の対策や避難計画に疑問が残ることを指摘し、安全性に関する証明も不十分だと判断した。
訴えにかかわった「脱原発弁護団全国連絡会」の河合弘之弁護士はこう話す。
「東電の原発事故後、司法は革命的に変わった。裁判官は良心的な人が多く、事故の恐ろしさを直視して、何かを感じている」
河合弁護士は、電力会社の株主総会の場でも脱原発を訴えてきた。
「株主は配当目当てなどの経済目的が多いので、数でいうと原発推進の立場が多くなる。ただ、推進の人が多く集まる株主総会で脱原発を直接呼びかけられることは、大きな意味がある」
という。
3月に出たばかりの新たな司法判断を含め、電力会社トップは株主総会で、経営環境の激変にどう向き合うかの説明を求められる。
電力業界を巡るもう一つの新たな動きは、原発を持つ全9社の2016年3月期決算が、震災後初めて黒字になったことだ。震災前まで原発依存度の高かった北海道、関西、九州が15年3月期まで赤字だったが、値上げ効果もあり、経営危機は一服している。
株主は、廃炉を巡る経営判断だけでなく、原発から出る使用済み核燃料の最終処分場確保や核燃料サイクルなど、国の原子力政策への電力会社のかかわり方にも疑問を呈している。こうした問題になると、経営陣の説明は「国が前面に立って進めている」「国に協力している」などと歯切れが悪い。