トロント1983
トロント1983

新刊情報&遅れてやってきた名作
Toronto 1983 (Cool Jazz)

 最近はこの連載で、折に触れて新刊に関する情報や途中経過などをお伝えしているのですが、おもしろいでしょうか? いまのところ「おもろない」という声も届いていないようですので、今回はイントロ代わりに新刊についてご報告させていただきます。

 ご存知の方はご存知のように、このことろマイルス新書シリーズを展開しているわけですが、このシリーズとはちょっと別に、いわばプラス・アルファの気分で、9月に『50枚で完全入門!マイルス・デイヴィス』(講談社プラス・アルファ新書)という本が出ます。名盤選でも傑作だけを紹介するものでもなく、「マイルスがわかるための50枚」というのがコンセプトです。マイルスが残した50枚のアルバムを基点に、マイルスという人物とその歩み、そしてジャズの歴史まで網羅してしまおうという無謀な試みに挑戦した本です。個人的にちょっとマニアックな路線がつづいたので、マイルス・ビギナーの方々を視野に入れて書いてみました。たまにはこういうものも出しておかないと、書店のマイルス・コーナーはマニアックなものになってしまいます。

 というわけで、今回ご紹介するのは、奇跡のカムバックから2年後の1983年、ギターがマイク・スターンからジョン・スコフィールドに代わった時代のライヴです。したがって1曲目は、同じジャーンでも《スピーク》というところが、いかにも「スコして」て、ワタシとしては歓迎したいところではあります。時期としては『デコイ』のど真ん中、さらに正確にいえばモントリオールの翌日のライヴとなります。だからトロントというわけなんですね。

 正直、まだこれだけ高音質の未発表音源が残っていたとは思ってもいませんでした。いままでどこに隠れていたのでしょう。しかもマイルスはオープンで吹きまくり、久しぶりに出しますが、タマランチ会長です。さらに加えてバランスも問題なく、かなり遅れてやってきた名作の雰囲気濃厚といっていいでしょう。

 3曲目、マイルスが鳴らしっぱなしにしたシンセサイザーに乗って変態テーマが飛び出す《ホワット・イット・イズ》には、この時代特有の狂気が充満しています。そうそう、マイルスの音楽は、このころはまだ病的だったのです。最後の曲は《アンタイトルド・チューン》となっていますが、うーん。曲名をご存知の方、ご教示いただければ幸いです。まだまだつづく暑い夏は、マイルスを聴いて乗り切りましょう!

【収録曲一覧】
1 Speak
2 Star People
3 What It Is
4 It Gets Better
5 Hopscotch
6 Star On Cicely
7 Jean Pierre
8 Star on Cicely
9 Untitled Tune
(1 cd)

Miles Davis (tp, synth) Bill Evans (ss, ts, fl, elp) John Scofield (elg) Darryl Jones (elb) Al Foster (ds) Mino Cinelu (per)

1983/7/8 (Canada)