以前、「朝活で落語を聴きたい!」という丸の内のサラリーマン・OL向けの落語会に出たことがあります。朝7時30分から1時間の独演会。こんな朝早くから落語なんて眠たいわ、口は回らないわ。聴く方も半分くらい居眠りしてると思ってましたが、さにあらず。皆さん早朝からよく笑う。質疑応答でも、メモを取りつつ、鋭い質問が飛び交いました。『朝活』なんてライトな響きに騙されてました。『朝活』、実は熱い。
「婚活寄席」という落語会もあったそうです。結婚したい男女数十人がともに落語を聴いて、終演後の打ち上げと称するパーティで親交を深める企画。
落語をやってる最中、会場中にソワソワしてる空気が充満し、噺家が打ち上げに参加しても誰もかまうことなく、鬼の形相で伴侶探しを続ける男女たち。……はじめに落語聴く意味はあるのでしょうか? 『婚活』、かなり死に物狂い。
「死ぬほど心がキュンとする、萌える」=『キュン死』『萌死』というそう。物騒な『死』という文字でコトの大きさを表す時代。「『◯活』なんてお気楽な言葉でくくってもらいたくないね」って人は『◯活』の代わりにこんなのはどうでしょう?
「死ぬほど結婚したい」=『婚死』。「死ぬほど朝から元気に動く」=『朝死』。死と活は隣り合わせだもの。
他にも『◯飢餓』『◯枯渇』『◯滅私』『◯極限』『◯血眼』『◯入滅』『◯渇望』……。
日本語って奥が深い、難しい。
でも全て投げ出す覚悟で何かに取り組んでいる人は、自分で「私、◯活中」って言わないんですけどね。誰かがくくりたがるんですよね。
※週刊朝日 2015年10月23日号
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