「米コロラド州で大麻合法化、販売開始」というニュースに驚いた人も多いだろう。早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦氏は、これを「うれしいニュース」として持論を展開した。

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 米国コロラド州は2012年11月の住民投票により嗜好用大麻の使用が合法化されたことを受け、2014年1月1日に大麻の販売を解禁したようだ。何であれ個人の自由を侵害する制度に反対の私にとってはうれしいニュースである。人は他人の恣意性の権利を侵害しない限りアホなことをする自由がある。

 大麻を吸うのは健康に悪いと主張する人がいる。もちろん体を害する人もいるだろう。タバコを吸っても、酒を飲んでも、ランニングをしても、肉を食っても、学校に行っても、会社に勤めても健康を害する人はいる。そもそも一番健康に悪いのは生き続けて歳をとることだ。健康に悪いことをするなと命令する法律も、健康に良いことをしろと命令する法律も共に悪法なのだ。

 アメリカには健康のためなら死んでもいいという人がいる半面、大麻を合法化する州もある。周囲の顔色を窺って村八分にされないことに腐心している多くの日本人とはエラい違いだ。私の早稲田の第一期生の教え子の一人は「日本で大麻特区を作ってそこだけ大麻を合法化したらどのくらいの経済効果があるか」といった旨の卒論を書いたが、日本にもそういう人はいる。コロラド州の当局者はこの卒論を読んだんじゃないかと思うくらい、良くできた卒論だった。コロラド州では大麻解禁により年約600億円の収益が見込まれ、税収も70億円に達すると試算されている。観光客の増加による経済効果も相当なものだろう。日本でも福島県に大麻特区を作って震災の復興費に充てたらいい。

 大麻はタバコや酒よりも社会的な害が少ないのは欧米の常識だ。タバコは良くて大麻はダメという科学的な根拠はない。厚労省は「ダメ。ゼッタイ。」と言って、大麻が悪の権化であるかのようなキャンペーンをやっているが、世も末だ。

 そもそも大麻取締法は戦後GHQの命令により米兵が大麻を吸って働かなくて困るという理由で急遽作らされた、前文もないいい加減な法律なのだ。アメリカに押しつけられた憲法を変えようと言っている人たちも、アメリカに押しつけられた大麻取締法を廃止しようと言わないのは不思議だ。法律を押しつけた当のアメリカでは医療用の大麻の合法化に続き、嗜好用大麻の合法化の流れも止まらないだろう。今のところ、連邦政府は大麻の合法化を認めていないが、大麻が儲かる産業ということになれば話は変わってくるに違いない。そうなった時、日本はどうするのか。ちょっと見ものだねえ。まあそれまで生きていればの話だけどね。

週刊朝日 2014年1月31日号