天皇家のスポーツといえば、テニスが有名だが、実はゴルフとも縁がある。昭和天皇は戦前、無類のゴルフ好きとして知られていた。当時の「東京朝日新聞」の記事からもその熱中ぶりが伝わってくる。
初めてゴルフの記事があるのは、大正6(1917)年8月19日付朝刊。
「東宮殿下には十八日午前八時宮の下御用邸御出門腕車にて箱根仙石原村なるゴルフ、コートに行啓御学友をお対手にゴルフの御遊戯あり午後四時御機嫌麗しく御帰邸成りたり」
当時16歳だった昭和天皇は、宮ノ下御用邸(現在の富士屋ホテル別館菊華荘)から仙石原のゴルフコースへ行き、「コースデビュー」を果たした。
このゴルフデビューについて、同年9月11日付に「ゴルフと三皇子/高尚なる欧米の遊戯近く我が皇室遊戯に選定されん」との続報がある。
ここでは、昭和天皇と弟の秩父宮、高松宮の3人の皇子が同年春からゴルフを始めたことが紹介されている。宮内庁式部官だった西園寺八郎氏の指導のもと、新宿御苑と赤坂御所にコースをつくり練習を開始。新宿御苑には芝生に150~300ヤードのコースがつくられたという。
西園寺氏は、3皇子が将来欧米を訪問し、各地の王族と交際するのに、もっとも適した遊戯だ、とコメント。野球やサッカーのような危険を伴わず、敵を倒すというような勝負とは違って、自分の技術を練習し、心胆を落ち着け物に動じない精神を涵養(かんよう)する点でも、皇室の御遊戯に適している、とも述べている。
大正7(1918)年2月17日付の記事では、宮内省(当時)が静岡県に約1万5千坪を有するゴルフ施設「田子の浦砂山運動場」を新設、昭和天皇が初プレーをしたと報じている。大正10(1921)年に訪欧した際には、往復の軍艦のデッキで連日「デッキゴルフ」に興じていたという。
朝日新聞に最後に昭和天皇のゴルフの記述があるのは昭和5(1930)年10月3日付。
「最近はハンディキャップ凡(およそ)二十位と承る(中略)日頃は吹上御苑(皇居)内に設けられた六ホールのリンクスで遊ばれている(中略)皇后陛下にも数年前からゴルフをお始めになられたが陛下と御相手でゲームを遊ばれる事などもある」
宮内庁関係者は言う。
「その後、戦況が悪化。ゴルフリンクスもあった吹上御苑には、防空壕(ぼうくうごう)がつくられ、そこで御前会議が開かれました。戦後、二度と陛下はゴルフをせず、周辺を武蔵野の野に戻すことを望まれました。バンカーなどがあった辺りも、今は草が生い茂っています」
現在の皇室でゴルフがお好きなのは、昭和天皇の次男の常陸宮ご夫婦だ。昭和天皇も訪れた東京ゴルフ倶楽部などでプレーする。
「特に旧華族の津軽家出身の華子妃は練習熱心で、とてもお上手です」(同)
※週刊朝日 2013年11月15日号