教育現場が揺れている。この6年で3割増しになっているともいわれる「非正規教員」だが、そのなかにも大きく二つのタイプがあるという。フルタイムの「常勤講師」とパートタイムの「非常勤講師」だ。非正規教員になるのは主に、大学などで教職課程を履修し教員免許は持っているものの、都道府県などが行う採用試験に受からなかった人たち。ほかには定年退職後、新たに非正規教員として働く人もいる。

 非正規は通常、長くて1年契約で、年度替わりに更新される。給与自体は自治体で上限を定めているところが多い。大半の人は終業式で福利厚生なども含めた契約が切れるため、春休み期間は「無保険状態」ということもよくあるらしい。

 身分の不安定さから、若い非正規教員は、毎年採用試験に挑む人が大半だ。西日本の中学校で正規教員として勤務するBさんは(30代)は、7回目の挑戦で採用試験に合格した。

「非正規の立場では、試験勉強などもあり、子どもに100%向き合えない葛藤(かっとう)がありました。でも今は、ずっと教員を続けていられる、子どもに向き合えるという安心感があります」

 教員としての出発点は、高校の数学の非常勤講師だった。1コマ約2500円で、月収は16万円ほど。そこから年金などが差し引かれた。塾のバイトを掛け持ちしてやっとの生活。当時の校長からは「ちゃんと働いたら正規の教員にさせてやるぞ」とパワハラめいた言葉で、プレッシャーをかけられた。採用試験には、校長の意見も資料として提出されるからだ。

 その後、中学校の常勤講師となり月収は約22万円に増えたが、部活動の朝練から始まり、朝7時から夜10時まで働いた。「正規教員より働いていた」(Bさん)が採用試験に落ち続けた。親から「先生にならなくてもいいだろう」と諭されたのは、正直こたえた。

 30歳になる年の4月、講師の仕事を中断し、勉強に打ち込む決意をした。無収入で半年勉強した末、正規教員の座をつかみとった。

週刊朝日 2012年11月30日号