「今回のように全社的にリモートワークが導入できるチャンスは、めったにありません。今後もインフラが遮断されるような大災害や、より致死率の高いウイルスの蔓延など、事業継続を脅かす緊急事態が起きる可能性はあり、そうなったときの課題を洗い出すまたとない機会でもあります。『リモートワークだから仕事が進まなくても仕方がない』と考えるのではなく、今回の緊急リモートワークを前向きな挑戦と位置づけ、みんなで乗り越えられるんだという自信をつけてほしい。特に企業の上層部や管理職の方たちの意識が結果を左右すると思います」
管理職にとって「テレワークはサボる」という思い込みもハードルになっているという。しかし、中川さんは
「少なくとも弊社が関わった企業の中で、効率が下がったというデータはありません。普段はオフィスでの会話を耳にするなど、ピンポイントでしか見えていないはずですが、部署内のチャットでは、誰と誰がどんな会話をして何を考えているのかがすべて履歴に残り、管理職は1~2週間のやり取りをながめていれば、うまく動けているかどうかがわかります。発言の数も一つのヒントになります。チャットがプロジェクトごとにきちんと整理されていれば、普段は月1回のミーティングでしか知ることができない仕事の進捗も、一目瞭然です。会社でも自宅でも、やる人はやるし、サボる人はサボる。それが可視化されるだけなのです」
導入したまま本人の努力に任せるのではなく、課題を洗い出し解決していく仕組みが必要なのだ。
■集中力アップのテクニック
だが、家でやろうと決めて持ち帰った仕事に、全く手をつけられなかった経験は誰にでもあるはず。これまでの在宅勤務でも、どうしても集中できなかったという人はどうすればいいのか?
「オフィスは仕事をする場所、家ではリラックスと切り分けて考えている人もいるので、自分自身が外と中でどのようにスイッチを入れ替えているのか考えてみてください。弊社の中でも、自宅のデスク周りにこだわっている人も多くいます。机にパソコン以外のものを置かない人、椅子や机の高さ、光の入り方にこだわる人、緑が視界に入ったほうが集中できる人などさまざま。一日中パジャマで作業していても問題ないわけですが、着替えやメイクなどの身だしなみを整えることがスイッチになっていることもあります」(中川さん)