日本の広域強盗事件に関与した疑いがある4容疑者が拘束されていた入国管理局の収容施設=1月28日、マニラ(撮影/翁長忠雄)
日本の広域強盗事件に関与した疑いがある4容疑者が拘束されていた入国管理局の収容施設=1月28日、マニラ(撮影/翁長忠雄)

 注目を集める広域強盗事件は、フィリピンの入管施設に収容されていた日本人が指示したとみられている。現地取材で見えてきたものは。AERA2023年2月20日号の記事を紹介する。

【写真】報道陣の取材に応じるフィリピンのレムリア司法相

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 日本各地で起きた広域強盗事件で、「ルフィ」を名乗る日本人が、フィリピン入国管理局の収容施設から犯行を指示していたとされる事件は、ニュースやワイドショーで連日大きく取り上げられた。「身柄拘束される施設で携帯電話を使って強盗や詐欺を指示できるのはなぜか」と、関心が一気に高まった。

 1月下旬、記者はバンコクからマニラへ向かった。

 ニノイ・アキノ国際空港から車で約13キロ。タギッグ市ビクータンの広大な警察敷地の一角に入国管理局の収容施設はあった。高さ約4メートルのコンクリート壁の上部は有刺鉄線が張られている。

 入り口横に詰め所があり、面会に訪れた人は荷物チェックを受ける。壁のパネルには持ち込み禁止の物品が写真で示されている。ナイフ、カメラなどのほかにダイナマイト、拳銃、ドラッグの写真もある。

 日本の警察が強制送還を求めた渡辺優樹(38)、小島智信(45)、藤田聖也(38)、今村磨人(38)の4容疑者はこの施設に収容されていた。

■「金さえ払えば」

 警視庁は「ルフィ」が誰なのかを明らかにしていないが、フィリピン当局は4人のうち1人からiPhone6台を没収したと発表した。レムリア司法相は4人が「施設内でVIPのように扱われていた」と認めた。

 取材に応じた施設関係者は「金さえ払えば『VIPルーム』で快適な暮らしができる」と証言した。通常は雑居部屋で2段ベッドが並ぶが、1週間ごとの「契約料」を払えば、冷房、トイレ、シャワー、冷蔵庫が備え付けられたVIPルームに入ることができる。食事も支給されるが外に出前も頼める。ビールを買うこともできる。

 フィリピン発のニュースがこれほど注目されるのは珍しい。しかし、フィリピン滞在歴20年余で現地邦字紙「日刊まにら新聞」元編集長の酒井善彦さんは「携帯電話は初歩中の初歩。またか」という印象を受けた。

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