過去の日本代表を見ても、早い段階からの主力固定がマイナスに作用した例は複数あった。2006年ドイツワールドカップで惨敗したジーコジャパン、2014年ブラジルワールドカップで同じく世界の壁に阻まれたザックジャパンがその好例だろう。

 前者はジーコ監督が「黄金の中盤」と言われた中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一の4人を重んじたことが悪循環の発端だった。彼らが共演したのは、チーム初陣となった2002年9月のジャマイカ戦(東京・国立)くらいで、その後は誰かが欠けて4人が並び立つことはなかった。時間の経過やチームの変遷とともに小野と稲本に対しての評価は徐々に下がったものの、中田と中村を絶対視するジーコのスタンスは変わらなかった。アジア予選途中に中田が長いケガから戻ってきた時には、わざわざ3バックから4バックに変更して彼の入るポジションを空けたし、ドイツ本番で中村が体調不良に見舞われた時もスタメンで使い続けた。こうした特定選手の重用はどこかでチーム破綻につながる。そのことを我々はドイツ大会の初戦・オーストラリア戦(カイザースラウテルン)の終盤3失点による逆転負けで思い知った。

 アルベルト・ザッケローニ監督に関しては、就任直後の2011年アジアカップ(カタール)優勝メンバーに絶大な信頼を寄せ、アジア予選が終わるまで序列を変えなかった。メディアの間では「メンバー表を待たなくてもスタメンが分かる」と囁かれたほど、主力がキッチリと決まっていた。予選の間には本田圭佑の長期離脱などアクシデントも起きたが、中村憲剛のトップ下起用といった一時的な対応策で乗り切れて、結果もついてきた。それが指揮官が真剣に競争を煽らなかった一因だろう。

 しかし、2013年コンフェデレーションズカップ(ブラジル)で2年間熟成させてきたはずのチームが通用しないという事実が露呈すると、いきなり柿谷曜一朗や山口蛍といった若い世代を抜擢し始める。その右往左往ぶりにザック監督の動揺が垣間見えた。それと同時に選手間で戦い方の方向性にもズレが出てきて、最終的な惨敗につながってしまった。

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