約25年間の系譜を見ても分かるように、日本代表の背番号11というのは「鬼門の番号」と言わざるを得ないのかもしれない。柿谷や宇佐美がワールドカップで精彩を欠いたあたりから、“11番の呪い”が関係者の間でより語られることが多くなった。11番の象徴的存在であるカズでさえも、よく考えてみれば長い間、夢に見続けてきたワールドカップ出場を逃すという悲運に見舞われている。不遇の歴史を覆すのは、そう簡単ではなさそうだ。

 若い北川はそんな過去の歴史を知らないはずだし、11番に特別なこだわりも持っていないだろう。にもかかわらず、A代表入りして最初の国際試合で記憶に残るミスをしてしまった。本人は「サッカーはミスのあるスポーツなので、それを試合の中で挽回できればいいと思います」と奮起していたが、そのチャンスが巡ってきて、今大会のヒーローになってくれれば、日本サッカー界の悪循環を払拭できるかもしれない。

 絶対的1トップの大迫勇也がいきなり初戦から2ゴールを奪う活躍ぶりで、同じポジションを伺う北川にとっては一段階ハードルが上がった感も否めないが、2011年アジアカップのファイナル・オーストラリア戦で決勝弾を挙げ、一躍ヒーロとなった李忠成のような例もあるだけに、気持ちを強く持つことが肝要だ。

「李選手は8年前、1試合目と決勝しか(ピッチに)立っていなかった。だからこそ、試合の間でも(集中を)切らすことなく準備することが大事だし、いつチャンスが回ってくるか分からない。途中から出る選手の力も必要になってくると思います」

 “11番の壁”を乗り越える選手がこの北川なのか。それとも近未来に出てくる別のストライカーなのか。そこに注目しつつ、今大会の先々の動向を見ていきたい。(文・元川悦子)

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