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 J2最終節の11月17日まで残り約1週間、2試合を残すばかりとなった。

 1部昇格のレギュレーションとして昨年までは、1・2位は自動昇格、3~6位によるプレーオフ(以下PO)準決勝、決勝を勝ち抜いた1チームが昇格していた。しかし今年はPO勝利チームはJ1・16位チームのホームで対戦し、勝利すれば昇格、引き分け以下ならJ1・16位チームが残留する条件に変更された。2部からの昇格がさらに困難になったといえる。

 しかも今季は残り2試合となった現在もまだ昇格チームが決定していない。40節終了時点で1位の松本山雅FCから7位の大宮アルディージャまでが勝ち点8の間にずらっと並ぶ。現在3位で昇格に必要なJ1ライセンスを持たない町田ゼルビアを除く、松本、大分、横浜FC、東京V、福岡の5チームで自動昇格の座を争い、さらに7位の大宮にもPO進出の可能性があるのだ。最終節までまったく目を離せない。

 今年は稀に見る大激戦だが、過去にもJ2リーグの最終節には観戦した人の心に刻みつけられるような様々な名勝負があった。

 芥川賞作家の津村記久子さんは、最新作『ディス・イズ・ザ・デイ』で、架空の2部リーグサポーターたちを主人公にして小説を書いた。執筆のきっかけは2015年の最終節、セレッソ大阪VS東京ヴェルディ戦を観たことだったという。

「それまでも海外サッカーが好きやったし、Jリーグも観てましたが、生で最終節を観たのは初めてで、リーグ中の他の試合とは全然違う独特の空気がありました。試合はセレッソが勝ってPO準決勝進出を決めたんですが、その瞬間、スタジアムにはなんとも言えない安堵感にあふれていた。でチーム皆がピッチを一周する際に、客席の女の子2人が、選手、監督はもちろんトレーナー、通訳の方まで全員の名前を、一人ひとりに呼びかけていたんです。それにとても驚いて。ほのぼのしたその光景が印象的やったんです。で帰り道、ジュビロ磐田サポの知人にJ1昇格おめでとうと連絡したら、疲労困憊(こんぱい)でぐったりな雰囲気の返信をもらいました。その時に、最終節という同じ日の同じ時刻でも、スタジアムによって全く様子の異なるドラマが起きていたことを興味深く思ったんです」

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最終節は悲喜こもごも…