

個性派俳優、佐藤二朗さんによる「AERA dot.」の新連載「こんな大人でも大丈夫?」。日々の仕事や生活の中で感じているジローイズムをお届けします。
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いや~、ようやく終わりました。僕がミュージカルに初めて挑戦した、舞台「シティ・オブ・エンジェルズ」。ホントね、緊張の連続でした。だってカラオケでもあんまり歌わない(泥酔したら歌う)僕がですよ、プロのオーケストラの伴奏で歌うんですよ。恐れ多いやら、でもお金を支払って観て頂くお客様方を裏切れないやらで、そりゃ並みの緊張じゃなかったです。
以前、知人から聞いたのですが、人が緊張しないようにするために、唯一有効な方法があるそうです。それは「緊張したいと思う」こと。心の底から「緊張しなきゃ」「緊張したい」と思えば、逆に緊張しなくなるとのこと。ホンマかいな、と思うのと同時に、なるほど、そうかもしれないとも思います。
現在公開中の映画「ルイスと不思議の時計」、その吹き替え版で共演した宮沢りえちゃんが、先日こんなことを言ってました。「最近、緊張を、"興奮"と思うようにしたら、少し緊張が和らぐようになりました」。緊張して手や膝が震えているのを、「これは興奮してるからだ」と思うようにしたら、少し楽になったとのこと。これにも「なるほど」と思わされました。
テンパリ沸点が異様に低く、あたふた、わちゃわちゃさせたら他の追随を許さぬ僕です。あらゆる場面で緊張しない訳がありません。そんな僕は、「緊張してることがバレてもいい」と思うようにしてから、少し楽になった気がします。緊張してることを隠そうとしたら余計緊張してることに気付き、そう思うようにしました。
ちょっと恥ずかしいことを書きますが、高校生の頃は女の子と話すのが物凄く緊張しました。正直言うと、20代前半くらいまで女性と話す度に緊張してました。今はこんなに楽しいのに。撮影現場に若い女性がいようものなら、オジサンその日1日、夢心地で過ごせるのに。いま不穏当な発言がありましたが、妻がこの文を読まないことを祈りながら書き進めますと、ホントに若い頃は、女性と話すの苦手だったんです。そして、その頃は「緊張するのはカッコ悪い」と思ってた気がします。