■侵略的外来種ヒアリに注意

 多くの動植物が絶滅の危機にさらされる中で、海外から船や飛行機で運ばれて日本国内に入り込み、分布を広げる種が増えている。これら「外来種」のうち、地域の自然環境に大きな影響を与え、人間の生活に被害や悪影響を及ぼすものは、「侵略的外来種」と呼ばれている。

 5月に兵庫県尼崎市で国内で初めて発見されたヒアリは、侵略的外来種として広く世界で警戒されている。貨物船で中国から運ばれてきたコンテナの中から見つかったが、その後も、港の近くを中心に各地で見つかり、調査とともに、定着させないための懸命の対策が行われている。ヒアリは強い毒を持ち、刺されると最悪の場合、死ぬこともあるという。

 すでに国内に定着・繁殖して自然環境や人間に悪影響を及ぼしている動物としては、アライグマ、マングース、グリーンアノール(トカゲ)などがある。アライグマはペットとして飼われていたものが捨てられるなどして野生化し、各地で農作物を食い荒らし、家屋に侵入して天井裏をふんや尿で汚すなど、深刻な被害をもたらしている。マングースは、毒ヘビのハブを駆除する目的で沖縄本島や奄美大島に持ち込まれたが、ハブはほとんど食べずにヤンバルクイナやアマミノクロウサギなど希少な在来種を食べることが明らかになった。両島では本格的なマングースの駆除が進行中で、その成果が現れ始めている。グリーンアノールは、小笠原諸島では60年代にペットとして持ち込まれたものが父島で野生化し、世界で小笠原にしかいない昆虫類にも大きな被害を与えている。

■人間の都合が生態系を乱す

 人間の勝手な都合により乱獲され生息環境を奪われた種は絶滅に追い込まれ、人間の勝手な都合や不注意により外国から侵入した種は、分布を広げて在来種の生息を脅かす。侵略的外来種と呼ばれる種は、一般的に多様な環境への適応力が強いから、駆除するのも簡単ではない。長い年月がつくりあげてきた日本の豊かな自然を守るために、これ以上の絶滅種は出さない、これ以上の外来種は増やさないという意識をみんなが持つことが大切だ。(サイエンスライター・上浪春海)

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