2016年11月11日、日本とインドが原子力協定を結んだ。この協定で、原子炉や関連の資機材、原子力燃料を、日本からインドへ輸出できるようになった。なぜ、こういう協定が結ばれたのか。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞国際報道部・中野寛さんの解説を紹介しよう。
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現在、インドは深刻な電力不足に悩んでおり、約3億人が電気のない生活を続けている。急速な経済成長を背景に、工場などへの安定した電力を供給する必要もある。そこで、原子力に高い期待を寄せている。インドがアメリカやフランスなどとも協定を結んで導入を進めている原子力発電所(原発)には、日本のメーカーの部品と技術が不可欠だ。こうした事情から、日本に協定を求めた。
日本側には経済的な利益に加え、インドの強い要望を受け入れて関係を強化することで、中国をけんせいする意図がある。海洋進出を強める中国は、インド洋や南シナ海でも勢力の拡大を図っている。中国に対抗するため、インドは日本の安全保障にとって重要なパートナーというわけだ。
だが、深刻な問題も指摘されている。
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